著者
森川 理 大竹 貫洋 埴 英郎 松村 光明 三浦 宏之 高橋 英和 西村 文夫 本橋 孝志
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.213-222, 2002-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
19

目的: 口腔内で使用する合金は生体適合性に優れ, 各種修復物に応用可能なものが望まれる. 最近, 耐食性に優れ, 生体適合性も良いとされる歯科用金チタン合金が市販された. そこで, この合金の機械的性質および陶材との焼付強さを測定し, その有用性を検討した.方法: 実験には市販の陶材焼付用金チタン合金を使用した. 各種鋳造試験片はメーカーの指示に従って鋳造, 熱処理を行い作製した. 機械的特性として引張特性, 硬さを, 熱的特性として熱膨張係数を測定した. 金チタン合金と従来型陶材, 超低溶陶材との焼付強さをDIN13927に準じて求めた. 対照として, 従来の陶材焼付用金合金と従来型陶材の焼付強さも求めた. 金チタン合金に従来型陶材を築盛し割断した試料をEPMA分析した.結果: 引張特性と硬さは熱処理により変化し, 軟化熱処理した値は有意に小さかった. 硬化熱処理ではタイプ4金合金に近い機械的性質を示した. 熱膨張係数は従来の陶材焼付用金合金よりも大きかった. 焼付強さはいずれの陶材を用いても40MPa以上を示し, 従来型陶材焼付用金合金の値とは有意な差を認めなかった. 剥離面を観察したところ金属側には陶材の成分が, 陶材側にはチタンが存在していた.割断面を観察したところ, 焼付界面直下に酸化チタンが認められた.結論: 今回検討した金チタン合金は, 単一合金で広範囲な修復が可能な機械的性質を有し, かつ十分な焼付強さを示したことからその有用性が示唆された.