著者
森本 義信
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.135-143, 1974

今回の調査で, 沖繩本島と石垣島からはじめてムカシエビ類が見つかった。沖繩本島産のオナガムカシエビ属の1種は, 奄美大島のアマミオナガムカシエビParabathynella gracillima insularisと同一であり, 石垣島のカワリムカシエビ属Allobathynellaの1種は, 幼体であったので種の決定ができなかった。沖繩本島産のムカシエビ属の1種には, オキナワムカシエビBathynella okinawanaという新名を与えてこの論文に記載した。今回の分をあわせて, 琉球全体のムカシエビ類を総括すると, ほぼ次のようになる。オオシマムカシエビBathynella oshimensisとアマミカワリムカシエビAllobathynell giganteaとは, どちらも奄美大島と徳之島とに分布し, アマミオナガムカシエビは, 前述のとおり奄美大島と沖繩本島から同じ種がとれている。また, オキナワムカシエビは, 四国南西部のヤノムカシエビBathynella yanoiに近い種であって, いずれの場合にも中部琉球と日木のものとの関連性がみられる。しかし, 石垣島産のカワリムカシエビ属の1種は, 中部琉球や日本のものと似ていないので, 中部琉球と石垣島とのあいだで, ムカシエビ類の分布に断絶があるのではないかと思われる。