著者
森村 優太
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 = The Bukkyo University Graduate School review. 佛教大学学術委員会, 文学部編集委員会 編 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.43, pp.135-150, 2015-03

「デンドロカカリヤ」は、一九四九年八月、雑誌「表現」に掲載された、安部が最初に執筆した変形譚である。この物語は「コモン君がデンドロカカリヤになった話」と、ストーリーテラーの役割を担う《ぼく》が説明するように、四回の植物への変形を終えて、《コモン君》という主人公が植物園へ収容されるまでの経緯をまとめた話である。この作品以降、安部は同様の変形譚で様々な賞を受賞し文壇で評価を得た。本作品において先行研究では、主人公である《コモン君》や、《ぼく》などが罹っている植物病や植物への変形についての考察が多く行われてきた。本稿でも同様に植物への変形にどのような意図があったのかを考察する。特に、「デンドロカカリヤ」に登場する人物像、戦後日本の状況に焦点を絞った。本稿は登場人物の様々な言動や性格とGHQ占領下における検閲制度などの視点から植物病の正体を解明できないかと試みたものである。安部公房デンドロカカリヤ変形譚戦後文学検閲