著者
森棟 隆弘 佐藤 恒義
出版者
富山大学工学部
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.77-81, 1954-03

静電気利用の一方面として鉱物或は粉体相互の分離乃至選別は,静電気の特性に依り一般の選鉱法とは全く別個の原理で行われるので,通常の選鉱で困難を感じる石英,蛇紋岩の様なものが別け易いと云う様な現像が出て来る。従って此の選別法を浮選叉は比重選鉱と結合したり,叉これ単独での処理法が完成すれば,原料処理の方面に大いなる進歩が期待出来る。本事項についての研究は米国に於けるJohnsonの研究がその基本と成り得るとも云い得るもので,選別機は大小2個のドラムから成る普通のものであるが,鉱物に依り正負の帯電あるのを利用し,且つ各種の鉱物及び岩石の反撥する電圧を実験的に定めたのが大いなる功績である。即ちこれが吾々の研究にも大いに役立ち,その上著しく静電選別の技術を向とせしめたと云って過言で無い。吾国に於ては真鳥正市,作井誠太氏は平板の極に対し長い円筒の極を縦に対立させ微粉を円筒内を通過せしめて上昇せしめることについて,及び帯電粒子を電極に衝突せる場合の運動,円筒の直径と粉の上昇との関係について研究した。鳥山四男氏は板状2極間に半導体叉は導体を入れたものについて,静電気及び交流高電圧を用いた基礎実験である。同じく鳥山,佐々木,山川氏等は不導体及び半導体ベルトを用いた選別と,平行ならざる電極間,平行2極間に金網を入れた時の粉体の運動を調べた。佐々木正入学士は傾斜平板に対し多数の針状電極を用いた場合の黒鉛の運動,並びに優良黒鉛を選別採取する事について報告した。著者及び林克済学士はクロム砂鉱の静電選別につき,特殊の装置を考案して選別し,叉湿式法を始めて行い好成績を得た。金谷秀一博は傾斜ベルト式のものを考案し,黒鉛の選別を工業的規模に迄進めた。本報告はクロム砂鉱及び低品位赤鉄鉱を取り扱ったもので,この試料について実験を行ったのは従来之等の選鉱成績が比較的良く無かったから静電的に試みたのである。前者は砂鉱であるから角の鋭い部分が少なく粉砕したものに比し帯電が一様であるから,理論的にも良く分れる。叉赤鉄鉱の方は粉砕したので,前者の様な好条件は得られないが,石英と赤鉄鉱両者の電気的性質の差異から,分け易いと考えたものである。
著者
森棟 隆弘 池田 正夫 島崎 利治 高畑 謙治 杉山 毅
出版者
富山大学
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.7-13, 1973-03

In producing ferro-manganese we reduce Mn ore in electric furnace or high temperature blast furnace, the path of their chemical change of manganese oxide is not clearly known in raising the temperature. We tried to reduce them in the presence of CO or solid carbon in small muffle furnace from the temperature of 700℃ to 1500℃. And every 100℃ the sample were extracted and examined by X-ray. In these tests, the sample ores were pyrolusite (MnO_2) and contained small amount of braunite (MnO・3Mn_30_4・Si0_2) and Mn_30_4. Next results were known in reducing heating. At 700℃; Mn_20_3 and MnO appeared. At 800℃; No change. At 900℃; MnO increased, γ-Mn_20_3 appeared. At 1000℃; MnO a little increased. At 1100℃; Almost all structure w ere MnO, Mn_30_4 dicreased. At 1200℃; MnO increased. At 1300--1400℃; No change. At 1500℃; Mn_30_4 desappeared, MnO decreased and Fe-Mn solid solution appeared, but Mn carbides (Mn_3C, Mn_3C_4) were not formed.マンガン鉱を高温電気炉又は高温高炉で還元してフエロマンガンを造る場合に,マンガン鉱の化学変化はただ想像されるだけで,それについて調べたものが無い。これらのことから著者らはインド産マンガン鉱を使ってCOガス又は炭素の存在下で鉱石を700℃から1500℃迄の間で加熱還元し,100℃毎にサンプルを取りX線で調べ,マンガン化合物の変化と金属マンガン,マンガン炭化物となる温度を調べた。又各種の化合物の生成について熱力学的にも考察を加へたが,マンガン炭化物については足掛りが出来た程度でなお深い研究を要する。これ等のことについての今迄の研究者はT.Yagi・hashi,K.Asada らで,COガスを使いマンガン鉱の還元挙動を解析している。著者らも昭和15年に,マンガン鉱石が各種の形のものがあることを示し,その製練法に言及している。