著者
佐野 信雄 森田 一樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度は、既存の500W、2.45GHzの電子レンジでCaO,SiO_2,Al_2O_3,FeO,Fe_2,O_3等の各種酸化物の加熱挙動を予備実験として把握した後、1.6kWのマイクロ波加熱装置と温度測定系のセットアップを行い、模擬転炉スラグ(CaO-SiO_2-Fe_tO系)のマイクロ波照射による加熱挙動を調べ、スラグ自身が加熱されることと、加熱挙動が鉄の価数すなわち析出結晶相の種類に大きく依存することを明らかにした。スラグ中に析出する相の中で最も加熱の寄与が大きいのはCaFe_3O_5であり、誘電損失値も最大であった。平成8年度は同スラグからの鉄の回収やりんの除去を念頭において、炭素共存下でのマイクロ波による加熱挙動を調べると共に、スラグ中の鉄やりんの挙動について検討を行った。マイクロ波の照射により約4〜6分で試料は1700℃に加熱され、炭素の含有量に伴い加熱速度は増加した。また、加熱試験中にスラグ中のFe_tOがグラファイトにより還元され、Fe-C合金相がスラグ下部に生成した。試料中Fe_tOの還元に必要なC量に対するC添加量をC当量とすると、C当量の増加と共にスラグ中に残留するFe量は減少し、C当量が1.5以上ではスラグ中の残留Fe濃度は2mass%以下であり、金属Feの回収率も90%以上に達している。また、C当量1以上では50〜60%のりんがFe-C合金中に還元されて移行するが約20%は気相中に除去されたものと考えられる。従ってスラグ中には15〜20%程度のみのりんが残留した。以上の結果により、炭素共存下での模擬転炉スラグのマイクロ波による加熱が確認され、鉄源の回収およびスラグ中からのりんの除去の可能性が示され、転炉スラグ、ダストの再利用および鉄、りん資源回収システムが提案された。