著者
滝沢 直樹 森田 浩庸 滝沢 久美子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0267, 2007

【はじめに】<BR> 若い男性にとって性行為は、重要なQOLの一つと考えられる。今回、膝関節拘縮により性行為時の体位が制限されていた症例が、2年以上の理学療法を行い正常位・後背位が可能になったのでここに報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 35歳、男性、左下腿骨骨折(GASTILOIII-C)。2002年12月仕事中建設重機に挟まれ受傷、10ヶ月間創外固定にて膝完全伸展位をとり、その間、前傾骨筋切除、皮膚移植、足関節固定術を受けた。2004年2月関節受動術を受けた。<BR>【経過】<BR> 2004年4月より当院外来リハ開始、膝関節屈曲60°であった。2004年5月に「性行為時に、正常位ができずに困っている」という訴えを受け、体位獲得のための関節可動域運動(以下ROMex)中心の理学療法を開始した。動作練習として、四つ這い位にて膝を固定し骨盤を前後傾させるClosed Kinetic Chainを行った。2004年11月膝関節90°まで改善したが膝関節の違和感(筋の張り)の訴えがあり正常位での性行為ができなかった。そこでROMexに加え、軟部組織へのアプローチと筋活動をより増加させるために、膝立ち位での動作練習も行った。2005年3月には、膝関節屈曲100°となり軟部組織の柔軟性も向上し、性行為時の膝の違和感は減少した。2005年5月から仕事を始めるようになり、運動量が増加、軟部組織の柔軟性も明らかに向上していった。練習開始から14ヶ月後の2005年7月末、膝関節屈曲100°、正常位での性行為が可能になった。さらにROMex、軟部組織へのアプローチ、動作練習を継続し13ヵ月後、2006年8月中旬には、後背位にての動作も可能になった。この間膝関節屈曲100°で変化は無かった。<BR>【考察とまとめ】<BR> 性行為時の動作獲得のためには、関節可動域の改善は当然であるが、スムースな動きを出す筋活動も求められた。本症例では社会復帰の結果、活動量の増加し、筋活動も増していったことが目標の達成のための大きな要因となったとも考えている。<BR>この症例にとって12ヶ月以降関節の可動域に変化は無かったが、性行為時の動作を再学習するためには、27ヶ月のアプローチは必要であった。<BR>今回の症例のように、青年層が重症外傷によって膝に障害が残るケースもある。このような場合、性行為などのQOLを考慮したサービス提供も考えていく必要がある。<BR><BR>【謝辞】<BR>本症例には、発表に際し内容、個人特定されないよう配慮する旨を説明し、快諾を頂いたことに感謝します。