著者
森藤 ちひろ
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.42-52, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本稿の目的は,国内メディカルツーリズムにおける消費者の移動動機を考察することである。既存研究では,国際メディカルツーリズムに焦点があてられ,国内メディカルツーリズムに関する研究は少ないが,我が国の国内メディカルツーリズム市場は拡大している。本稿では,金沢市に拠点を置くメディカル・ウェルネス複合施設を事例として,健診・人間ドック受診患者に関する分析を行った。その結果,患者は遠方から移動や宿泊コストをかけて訪れていたことが明らかになった。push要因として,患者の健康意識の高さ,健康関連サービスに対するリテラシーの高さ,情報収集のしやすさが患者の移動動機を醸成していることが示唆された。pull要因としては,観光地としての目的地の魅力,交通の利便性,メディカル・ウェルネスサービスの融合,サービス提供施設のホスピタリティが抽出された。これらの要因が包括的に消費者の移動動機に影響していたと考えられる。また,メディカルサービスの品質によって顧客との信頼関係が構築され,その信頼がウェルネスサービスの知覚品質に影響を及ぼし,顧客の健康関連サービスに対するニーズを喚起し,消費行動を促進している可能性が示唆された。