著者
土谷 敏雄 堀内 哲郎 森谷 太郎
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.85, no.979, pp.127-133, 1977-03-01

Ag<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>系ガラスは60mol% Ag<sub>2</sub>Oまでガラス化出来た. 赤外吸収の比較から, Ag<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>とNa<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>は同じ様な構造を持つが, Ag<sub>2</sub>O含有ガラスの1280, 1100cm<sup>-1</sup>の低波数へのshiftは, Ag-O-Pボンドが共有結合的性格を持つことが示唆された. 電気伝導の結果から, logσはAg<sub>2</sub>O量の増大と共に増加し, 熔融温度と時間の増加と共に増加した. Ag<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>はNa<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>にくらべ, logσが非常に高く, 低い温度係数を示した. 一方, 誘電測定からのε', ε''は, Ag<sub>2</sub>O量の増加と共に急激に増加し, Na<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>よりも非常に大きな値を示し, 誘電緩和の大きさ<i>Δ</i>εは約50mol% Ag<sub>2</sub>Oで極大が観察された. Ag<sub>2</sub>O-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>ガラスの誘電緩和は, 40mol% Ag<sub>2</sub>Oより少ない組成ではmigration loss, 50mol% Ag<sub>2</sub>O以上の組成ではMaxwell-Wagner lossにもとづく. 銀を含むガラスの特異性は, 他のアルカリイオンの様に, Ag<sup>+</sup>を単なる1価のイオンと見なして電気的性質を理解する事は, 困難である事が示唆された.
著者
大河原 晋 大牟礼 勝 森谷 太郎
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.64, no.722, pp.65-73, 1956

三石蝋石32%, 同質シャモット40%に, 猿投木節と蛙目粘土をそれぞれ24%および4%ずつ結合剤として加え, 加水, 成形後, これを1400°, 1時間焼成して製作した実験用小型坩堝を用いて, 2種のガラス, すなわちソーダ石灰ガラス (Na<sub>2</sub>O・CaO・3SiO<sub>2</sub>) とソーダ鉛ガラス (Na<sub>2</sub>O・PbO・3SiO<sub>2</sub>) の予めカレットとしたものを, 1200°と1400°に熔融し, この温度に達した直後のもの, 2, 3, 4時間後のものを, 炉内から取出して空冷した際に, 各ガラスがそれぞれの坩堝を侵蝕している状態を鏡検してその機構を考察した.<br>その結果によれば, いずれのガラスでもほぼ同様な侵蝕過程が認められ, 坩堝素地のアルミナ成分の熔解がムライトの熔解にやや先行する結果, 1200°では坩堝素地中の粘土とカオリン質蝋石の各〓焼部分周辺のガラス中に少量のネフェリンを混入したカーネギエイト結晶層が析出しており, 時間の経過と共にこれらの結晶は粘土〓焼部分の周辺から消失し, カオリン質蝋石の〓焼部分周辺に顕著な増加を示す. しかるに, 1400°ではいずれのガラスでも, 最初ダイアスポア仮像周辺のみにカーネギエイトを少量混入したネフェリン結晶の析出が認められ, 時間の経過するにつれて, 結晶は徐々に消失していって, 逆にガラスが坩堝素地内部に浸入し, 外観が白色の極めて薄い侵蝕層を形成するに至る. すなわち, 坩堝素地の表面で若干の成分交換が行われ, それ以後はガラス中への坩堝素地の熔解が, 常に侵蝕層を間にして進んでゆき, 時間が経過するにつれて侵蝕層は少しずつ素地内部に後退してゆく. 全般的に見て, ソーダ石灰ガラスよりもソーダ鉛ガラスの方が侵蝕の度合が強い.