- 著者
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森谷 理紗
- 出版者
- 大東文化大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2019-01-04
最終年度は、新型コロナウイルスの影響で当初計画していた海外出張が遂行できなかったが、これまでに収集したロシア公文書館の資料分析を続行した他、国内でシベリア抑留中に作られた曲の楽譜や当時書き留められた歌詞集の手稿、さらにシベリアから持ち帰られた楽器等が新たに見つかりこれらをもとにシベリア抑留をめぐる芸術文化の歴史を知る上で重要な新たな発見があった。特に、公文書館で入手したイルクーツク州タイシェットの第7収容所で活動した「新声楽劇団」関連資料を補完する楽劇団の当事者であった元抑留者の手記が見つかり、日本とロシアの史料を照合して楽劇団活動の実情を詳らかにした。研究成果はロシアで開催された若手研究者のための国際学術会議『古代から21世紀までのロシア史: 課題・議論・新しい視点』(モスクワ、ロシア歴史大学)でオンラインにて発表した。さらに、この学術会議の論文集に、論文「シベリア抑留下の日本人捕虜たちの創造活動(1945-1956)」(論文集『古代から21世紀までのロシア史: 課題・議論・新しい視点』、Y.ペトロフ、O.プレフ編、ロシア歴史大学、2021年、466-476頁)が掲載された。また、複数の手記や写真資料などから素材・製法・形状などの情報を総合して再現楽器「ラッパ付きヴァイオリン」を製作したほか、収容所で印刷され捕虜たちに配布された『ソヴェート歌曲集(附)日本闘争歌集』の歌の音源資料化を行い、平和祈念展示資料館の企画展「シベリアでの出会いー抑留者の心に残った異国の人と文化」に出展した。さらに大東文化大学、舞鶴引揚記念館、舞鶴市立若浦中学校(京都府)で『シベリア抑留と音楽・文化ー記憶の継承へ』と題したレクチャーコンサートを企画し、シベリア抑留研究者や日本人・ロシア人アーティストを招いた講演と演奏を行い、抑留中に創作された曲の初演をするなどアウトリーチ活動にも力を注いだ。