著者
植木 保昭
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

有機系廃棄物であるポリエチレン(PE)とゴミ固形化燃料(RDF)を還元材に用いた酸化鉄(ウスタイト)の還元実験を行ったところ、RDFを用いた方が高還元率を得ることができた。これは、PEは固定炭素を含有していないが、RDFは固定炭素を含有しているため、RDFの熱分解によって試料内部に多くのチャーが残留し、このチャーによりガス改質反応(CO_2+C=2CO、H_2O+C=H_2+CO)が生じ、COが長時間発生し続けることで、還元雰囲気が持続したためであると考えられる。また、有機系廃棄物が熱分解されて生じた炭素がガス改質反応に及ぼす影響について調査することを目的として、炭素結晶性や比表面積が水蒸気-炭素間反応に及ぼす影響について注目して調査を行った。熱分解炭素としてRDF、木材粉(Wood)とCH_4ガスを1100℃で熱分解させたCarbon Black(CB)を用いた。ラマン分光分析の結果(ラマンスペクトルにおけるI_V/I_G値)から、熱処理温度が高い炭素ほどI_V/I_G値が小さくなり、黒鉛化が進行し結晶性が向上していることが分かった。一方、水蒸気による炭素のガス化速度は全ての炭素で熱処理温度が高くなるにつれて小さくなった。ガス化速度とI_V/I_G値、及び比表面積の関係は、両指標ともにガス化速度とおおよそ直線関係が得られた。I_V/I_G値が小さくなると反応性が悪くなるのは、黒鉛化が進行し結晶性が向上すると反応サイトが減少する事と、炭素の脱離が起こりにくくなる事が要因であると考えられる。同様に比表面積が小さくなると反応性が悪くなるのは、反応サイトが減少するためだと考えられ、I_V/I_G値と比表面積にも相関関係があると推察される。