著者
植村 浩
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.855-861, 1994-11-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
27

生命現象を分子レベルで理解しようとする生化学はアルコール発酵すなわち解糖系の研究から始まった。その制御機構に関してもパスツールの時代から議論されてきた。しかし, 解糖系が生物の基本的代謝のため変異を利用した研究が困難である等のこともあり, 150年以上経た現在でも分子生物学レベルでの遺伝子発現制御系の全容は解明されていない。酵母の解糖系は高等動物と基本的には同じであり解糖系の制御機構解明の研究対象としては格好の微生物である。最近になり酵母での解糖系を統一的にかつ特異的に制御している因子群が見い出され, その遺伝子や変異株を用いた研究が進められている。これらの因子群の相互の役割についても明らかにされつつあり, 解糖系の制御機構の解明も間近なことを予感させる。