著者
植田 佐知子 安藤 隆男
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.73-82, 2021-08-31 (Released:2022-02-28)
参考文献数
24

本研究の目的は、肢体不自由特別支援学校の重複障害学級の教師を対象として、自立活動の授業過程における困難さに教師がどのように対処し、その結果としてどのような内容を獲得したのかを明らかにすることである。自立活動の授業過程に関する質問項目の因子分析の結果から、教師は困難さを自覚し、同僚との協働により対処していた。多変量分散分析を行った結果、肢体不自由教育経験年数の1~5年の教師群は困難さを抱きやすく、相談相手および相談機会を多くもつ教師群は困難さを同僚との協働により対処していた。困難さへの対処により教師が獲得した内容に関する自由記述を分析したところ、教師は自立活動の指導における「身体の動きの指導に関する知識・技術」「実態に応じた指導方法」「教師として求められる多様な視点」を獲得していた。また、肢体不自由教育経験年数により、教師の獲得内容は異なった。以上から、自立活動に関する教師の力量形成には、教師たちの協働化を促進する学校組織の形成や実践経験に応じた研修内容の見直しの必要性が示唆された。