著者
加藤 一幾 植田 稔宏 松本 英一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.345-350, 2008-07-15

黒ボク土地域の施設栽培において,コマツナ'夏楽天'の3作連続栽培試験(夏作(1),夏作(2),秋作)を行い,施肥前上策中(深さ0〜15cm)の硝酸態窒素量を基準量からさし引いた窒素診断施肥を行い,高温期の可食部硝酸イオン濃度を低減することを目的とした.夏作の可食部硝酸イオン濃度は標準区(N7kg・10a^<-1>)と診断施肥区(診断N7,診断N5kg・10a^<-1>)の間にはほとんど差がなく,診断施肥による低減効果はほとんどなかったが,秋作では診断施肥による低減効果が顕著にあらわれた.一方,窒素を施肥しない無窒素区では全ての栽培季節で著しい低減効果が認められた.また,夏作(2)の無窒素区では栽培期間を5日間延長することで標準区と同等の収量を得ることができた.土壌から無機化した推定窒素量は夏作におけるコマツナの窒素同化量を上回った.以上のことから高温期のコマツナ施設栽培では,より詳細に植物の窒素同化量を推定することで,収穫までに必須な窒素量を明らかにし土壌からの無機化窒素量を考慮した診断施肥の窒素基準量を設定することで,収量を維持しつつ可食部硝酸イオン濃度をさらに低減できると考えられた.