著者
升田 貴仁 椎名 愛優 三階 貴史 長嶋 健 藤本 浩司 髙田 護 池田 純一郎 大塚 将之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1060-1066, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
30

若年者の乳腺葉状腫瘍はまれであり,線維腺腫,特に若年性線維腺腫との鑑別は困難である.これまでは線維腺腫であれば腫瘤摘出術,葉状腫瘍であればマージンをつけた切除が必要とされてきたが,近年,葉状腫瘍に対する手術においても断端陰性であればマージンは不要であるという報告が増加している.症例は11歳,女児.左乳房に7cm大の腫瘤を自覚し受診.画像検査および針生検では若年性線維腺腫もしくは良性葉状腫瘍が疑われ,腫瘤摘出術を施行した.病理結果は良性葉状腫瘍で断端は陰性であった.自験例では良性葉状腫瘍であったことと,腫瘤摘出術によって断端陰性が得られたことより,追加切除は施行せず,術後6年6カ月無再発で経過している.若年者の葉状腫瘍に対する治療において,根治性とともに整容性や機能温存へ十分配慮した上での方針決定が望まれる.