著者
中村 祐介 吉富 秀幸 清水 宏明 大塚 将之 加藤 厚 古川 勝規 高屋敷 吏 久保木 知 高野 重紹 岡村 大樹 鈴木 大亮 酒井 望 賀川 真吾 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.258-264, 2015-04-20 (Released:2015-05-08)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

【目的】膵腺房細胞癌(以下ACC)は稀な膵腫瘍であり,その発生頻度は全膵腫瘍の約0.4%とされる.本疾患の臨床病理学的特徴には未だ不明な点も多く,自験例での検討を行った.【対象】2004年から2011年までに当教室で経験し,組織学的に確認し得たACC 4症例.【結果】平均年齢は68.2歳,全例男性で,CT検査画像では境界明瞭で内部不均一な低濃度腫瘤影を呈し,血液検査では血清エラスターゼ1,AFP値の上昇を認めた.治療は3例に根治的切除が施行され,切除不能例には5-FU+放射線照射併用療法が施行された.切除例全例に肝転移再発を認め,追加切除または全身化学療法を施行した.治療成績では追加切除例で68.4ヶ月,切除不能例で70.0ヶ月の長期生存例を経験した.【結論】今後も症例の集積により,再発・転移例に対する積極的な制癌治療を含む治療戦略の検討が必要と考えられた.
著者
高屋敷 吏 清水 宏明 大塚 将之 加藤 厚 吉富 秀幸 宮崎 勝
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.172-179, 2014-05-31 (Released:2014-06-10)
参考文献数
30

膵・胆管合流異常は膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常であり,2012年には診療ガイドラインも上梓された.膵・胆管合流異常は胆道癌の明確なリスクファクターであり,胆道専門医には時期を逸さない適切な診断・治療が求められる.膵・胆管合流異常の診断にはMDCT, MRCP, EUSなどの画像診断も有用とされてきているが,依然としてERCPによる直接造影がゴールドスタンダードである.外科切除術式は胆管拡張型(先天性胆道拡張症)に対しては胆嚢,肝外胆管切除+胆道再建術,いわゆる分流手術がコンセンサスを得られているが,非拡張型に対する肝外胆管切除再建の必要性についてはいまだ結論がでていない.更には非拡張胆管とは何か,すなわち正常胆管径の定義などいまだ多くの論点がある.これらの解明には全国集計による症例集積の解析や胆道癌発癌メカニズム解明に向けた基礎研究などの報告も待たれる.
著者
吉住 有人 久保木 知 高屋敷 吏 江藤 亮大郎 那須 克宏 近藤 孝行 大塚 将之
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.624-631, 2023-12-01 (Released:2023-12-11)
参考文献数
17

症例は70歳代,女性.C型肝炎のSVR後の経過観察中に肝腫瘤を指摘された.精査の造影CTおよび造影超音波検査では早期相で造影効果を示し,後期相でwash outを呈する27 mm大の腫瘤を認めたが,中肝静脈に流入する流出静脈の描出を認めたため肝血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)と診断し経過観察の方針とした.3カ月後の造影CTでは腫瘤は47 mm大と増大し,流出静脈を認めなくなったため肝細胞癌の可能性を考えて左肝切除術を施行した.病理組織学的検査では腫瘍細胞が中索状に増殖し脂肪変性を認め,中分化型肝細胞癌と診断された.流出静脈の早期描出は肝AMLに特徴的で,脂肪変性を伴う肝細胞癌との鑑別診断に有用とされる.一方,流出静脈の早期描出を認める肝細胞癌の報告例は自験例が初めてであり,脂肪変性を伴う肝細胞癌と肝AMLをより正確に診断するためには今後さらなる症例の集積が必要である.
著者
田中 圭 大塚 将之 清水 宏明 吉留 博之 加藤 厚 古川 勝規 吉富 秀幸 岸本 充 中谷 行雄 宮崎 勝
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.11-17, 2014-01-01 (Released:2014-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

症例は61歳の女性で,嘔気を主訴に近医を受診した.上部消化管内視鏡で十二指腸第2部に潰瘍性病変を認め,生検で低分化腺癌と診断された.CTで門脈前後区域枝分岐部に接する造影効果の乏しい腫瘤を認め,十二指腸癌,肝転移の診断で全身化学療法が提案された.本人・家族がセカンドオピニオンを希望され,2病院を受診したのち症状出現から4か月後に当院紹介となった.精査で十二指腸癌,および肝炎症性偽腫瘍などを含めた肝腫瘤の診断にて膵頭十二指腸切除術,拡大肝後区域切除術を施行した.病理組織学的検査で十二指腸および肝臓ともに癌は認めず,壊死巣を伴う肉芽腫を認めた.壊死巣では術前に十二指腸生検で見られた癌細胞に類似する壊死細胞が認められ,免疫組織学的に壊死細胞はcytokeratin陽性であった.以上から,十二指腸癌および肝転移が自然消失したものと考えられた.十二指腸癌の自然消失の報告はなく,文献的考察を加えて報告する.
著者
吉田 充彦 当間 雄之 大塚 将之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.593-596, 2020-05-31 (Released:2020-11-30)
参考文献数
16

症例は57歳男性。心房細動に対してワルファリン内服中であった。以前より自慰目的に肛門から直腸内へ約30cmの棒を挿入していた。翌日から下腹部痛を認めたが様子を見ていた。自慰行為2日後の未明に腹痛が増悪したため救急要請し当院救急搬送された。血圧40mmHgとショック状態であったが急速補液で循環の安定を得た。腹部CTを撮影したところ直腸間膜内に血管外漏出像を伴う巨大血腫と多量の血性腹水を認めた。明らかな腹腔内遊離ガスは認めなかったが,問診情報を踏まえ,異物による直腸・直腸間膜損傷および腹腔内出血と診断し,緊急手術を行った。開腹すると直腸間膜に形成された血腫から活動性の出血が確認された。縫合止血は断念し損傷部を含めて直腸・直腸間膜を切除し,人工肛門を造設した。直腸異物によりショックに至る腹腔内出血を起こしうるため,可能性がある場合は適切な問診により診断・治療を進めることが望ましいと考えられた。
著者
升田 貴仁 椎名 愛優 三階 貴史 長嶋 健 藤本 浩司 髙田 護 池田 純一郎 大塚 将之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1060-1066, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
30

若年者の乳腺葉状腫瘍はまれであり,線維腺腫,特に若年性線維腺腫との鑑別は困難である.これまでは線維腺腫であれば腫瘤摘出術,葉状腫瘍であればマージンをつけた切除が必要とされてきたが,近年,葉状腫瘍に対する手術においても断端陰性であればマージンは不要であるという報告が増加している.症例は11歳,女児.左乳房に7cm大の腫瘤を自覚し受診.画像検査および針生検では若年性線維腺腫もしくは良性葉状腫瘍が疑われ,腫瘤摘出術を施行した.病理結果は良性葉状腫瘍で断端は陰性であった.自験例では良性葉状腫瘍であったことと,腫瘤摘出術によって断端陰性が得られたことより,追加切除は施行せず,術後6年6カ月無再発で経過している.若年者の葉状腫瘍に対する治療において,根治性とともに整容性や機能温存へ十分配慮した上での方針決定が望まれる.