著者
河野 真紀子 佐藤 裕二 北川 昇 椎名 美和子 原 聰
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.260-269, 2007-04-10 (Released:2010-08-10)
参考文献数
26
被引用文献数
4 7

目的: 超高齢社会を迎えた今, 患者のQOL向上のためには, 効率的で質の高い義歯治療が重要である, そこで, 義歯治療のテクノロジーアセスメントの手法を用いて, そのアウトカムを調査し, 新義歯治療における患者の義歯に対する評価の経時変化と, その原因を明らかにすることを目的とした.方法: 上下総義歯を新製した患者35名のアウトカムを検討した. 本研究では, 咀嚼機能・満足度・顎堤の状態をテクノロジーアセスメントとし, そのスコアを算出して用いた. 診査時期を,(1) 新義歯完成前の旧義歯使用時 (2) 新義歯装着後初回調整時 (3) 装着後約1ヶ月の3回とし, その評価の変動を検討した. また, 咀嚼機能評価および満足度評価の評価構成因子を分析・検討した.結果: 咀嚼機能評価では, 旧義歯の評価が高いほど新義歯の評価が低下する傾向が示された.満足度評価は, 経時的にスコアが上昇し, 「上顎義歯の適合性」と「下顎義歯の違和感」が満足度評価を左右する因子であることが示された. さらに, 咀嚼機能評価と満足度評価の変動には, 正の相関が示された.結論: 新義歯装着前後の患者の義歯に対する評価の経時変化と, その原因が明らかになり, 患者の満足度を高めるためには, 咀嚼機能および上顎義歯の適合性下顎義歯の違和感に重点をおいた治療をすべきであるという臨床的な示唆が得られた.