著者
椿 光之助
出版者
日本時間学会
雑誌
時間学研究 (ISSN:18820093)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-58, 2015 (Released:2017-02-24)

本稿は、“強い持続可能性”の条件の下で、世界の人々を、自らの事業の利潤の拡大を目指す「資本家」と、既存の自国内の生産活動に従事する能力しか持たない「労働者」、及び、グローバル・コモンズの自然資本を持続可能な形で使用する能力を持つ「グローバル人材」に分類する。本稿のモデルでは、気候変動により自然資本が変質し、生産活動への投入速度が低下するが、①各国の労働市場のグローバル化を推進し企業、政府、国際機関等が「グローバル人材」に活躍の場を与えること、②各国が協調し国連大学への資金拠出など「グローバル人材」育成の純投資速度を大きくすること、③「グローバル人材」育成のための人的資本への国際的な投資のうち既存の技術に基づく生産活動に動員する労働者の養成に使う投資速度の割合を小さくすること、④資本家が国外からの人的資本への投資の一部を自らの人的資本の形成のために利用する占有比率を引き下げ、労働者の人的資本の形成のために利用する比率を引き上げ、「グローバル人材」の育成を進めること、という諸政策が全世界で実施され、継続される期間が長くなるほど、消費水準を維持し、さらに大きくできる可能性があることが示される。