著者
吉門 洋 椿 貴博 佐々木 寛介
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-26, 2006

メソスケール気象モデルにオイラー型の物質輸送拡散モデルを組み合わせた濃度分布シミュレーション手法を用いた大気汚染の長期評価手法の可能性を検討した。本稿ではその手法のオゾン (光化学オキシダント) への適用を試みて, 関東地方における濃度実態の解析と合わせ, 必要なモデル性能について考察した。<BR>オゾンに関する長期評価の対象は高濃度日 (日最高濃度が注意報レベル120ppb以上) の出現頻度とした。<BR>関東地方のうちでも特に東京都とその風下にあたる埼玉県および群馬県南部を対象として, 1999~2001年の高濃度出現時期6~8月について域内のオゾン濃度と広域的な気象パターンの関係を解析した結果, 54種類中10種類の気象パターンの日に高濃度日の75%が, また高濃度時間数の90%程度が含まれていた。<BR>頻度の低い2パターンを省き, 上位8気象パターンに属する日からそれぞれ代表日を選出して, メソスケー・ル気象モデルANEMOSと有機光化学反応モデルCBM-IVによる8日分の濃度シミュレーションを行った。計算された日最高オゾン濃度と実測から得られたその平均的ばらつき, および各気象パターン出現頻度を集成して域内のオゾン高濃度日数の分布を算定した。結果は, 実測と比較して内陸地域での高濃度出現が過剰で, さらに気象モデル, 発生源データ, 反応モデルの精度とシミュレーション代表日選択方法に検討の余地があるが, この評価手法により有用な分析が可能であることが示された。