著者
山口 典之 樋口 広芳 辻本 浩史 井上 実 森 さやか 佐々木 寛介
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

1. 空中餌資源を把握するための飛翔性昆虫採集ユニットを作成し、ドローンに搭載して採集を行った。ドローンの飛行は安定しており、比較的高速 (ca. 40km/h) で行えたが、捕集できた昆虫類は少なかった。空中餌資源の分布や量がかなり疎であることが理由なのか、捕集システムに大きな問題があるのか検討を重ねる必要が残った。2. ハリオアマツバメの GPS 遠隔追跡を順調に実施し、データを蓄積した。巣からの採食トリップの空間スケールや高頻度利用域の解析を進めた。個体によっては時折、数10km以上の遠方まで直線的に移動していることも明らかになった。利用環境は農耕地(牧草地、耕作地)と林縁・防風林を含む森林だけでなく、都市部の緑地帯や公園にもおよび、都市部についてもかなりの利用が認められた。3. 給餌に持ち帰った餌生物サンプルを蓄積し、空中でどのような餌生物を捕獲しているのかについての解明を進めた。多様な餌を利用していることがわかったが、ケアリ類やクロスズメバチがよく利用されていた。空中での個体数が多い、集中的に分布しているなどの理由が考えられた。どのようにして、そのような集中的に餌生物が発生しているところを発見するかについて、今後、実験アプローチを取り入れて調査を進めることになった。4, 巣箱の設置を継続し、2 年にわたって高い利用率での繁殖誘致に成功した。本種の人工的繁殖場所の提供および生態研究のための環境整備について順調に進捗した。本種は繁殖場所となる大径木の現象に伴い個体数を減らしている。そのような種の保全に役立つ知見を提供することができる見通しが立った。5. 野外調査地で気象調査ドローンを飛ばし、空中の精度高い気象データを計測した。6. 上記の 2, 3, 4 についての現時点での成果をとりまとめ、日本鳥学会 2019 年度大会で発表した。
著者
吉門 洋 椿 貴博 佐々木 寛介
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.15-26, 2006

メソスケール気象モデルにオイラー型の物質輸送拡散モデルを組み合わせた濃度分布シミュレーション手法を用いた大気汚染の長期評価手法の可能性を検討した。本稿ではその手法のオゾン (光化学オキシダント) への適用を試みて, 関東地方における濃度実態の解析と合わせ, 必要なモデル性能について考察した。<BR>オゾンに関する長期評価の対象は高濃度日 (日最高濃度が注意報レベル120ppb以上) の出現頻度とした。<BR>関東地方のうちでも特に東京都とその風下にあたる埼玉県および群馬県南部を対象として, 1999~2001年の高濃度出現時期6~8月について域内のオゾン濃度と広域的な気象パターンの関係を解析した結果, 54種類中10種類の気象パターンの日に高濃度日の75%が, また高濃度時間数の90%程度が含まれていた。<BR>頻度の低い2パターンを省き, 上位8気象パターンに属する日からそれぞれ代表日を選出して, メソスケー・ル気象モデルANEMOSと有機光化学反応モデルCBM-IVによる8日分の濃度シミュレーションを行った。計算された日最高オゾン濃度と実測から得られたその平均的ばらつき, および各気象パターン出現頻度を集成して域内のオゾン高濃度日数の分布を算定した。結果は, 実測と比較して内陸地域での高濃度出現が過剰で, さらに気象モデル, 発生源データ, 反応モデルの精度とシミュレーション代表日選択方法に検討の余地があるが, この評価手法により有用な分析が可能であることが示された。