- 著者
-
楊 冠穹
Guanqiong Yang
- 出版者
- 関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
- 雑誌
- 研究論集 = Journal of Inquiry and Research (ISSN:03881067)
- 巻号頁・発行日
- no.112, pp.61-74, 2020-09
中国文学は90年代に登場した「美女文学」と「八〇後」により、若い読者の興味を強く喚起した。そこで、「八〇後」の命名問題は80年代生まれの作家群の文学史的位置付けに関わっているが、その命名の暴力性には、時代区分による文学史理解の影響が大きい。さらに、80年代に生まれた世代を象徴する「八〇後」という言葉またはその歴史区分的な意味が、文学ないし文化の領域において広く概念化されていくことは、鄧小平政権の優越性を意識させる一種のプロパガンダとも考えられる。その結果、習近平政権の正式な登場とともに、「八〇後」世代の作家群を「八〇後」文学として統括するという歴史的役割が終結した。一方、「八〇後」を代表する韓寒(1982〜)はこれまでに多くの論争や議論を巻き起こしたが、彼の「公共知識人」性格も、習近平政権の台頭による「八〇後」という文学概念の退色と彼自身の作家から映画監督への転向によって、次第に薄くなる。