著者
楠原 庸子
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ギムネマシルベスタという植物に含まれるペプチドのグルマリンは、マウスの鼓索神経(CT:舌前方支配神経)の甘味応答を抑制する。当研究室の研究から、マウスの甘味受容経路にはグルマリン感受性(GS)と非感受性(GI)が存在しており、GS経路にはGustが関与していることが明らかとなっている。さらに、うま味物質に核酸のIMPを混ぜることによるうま味の相乗効果はGS経路を経ることが示唆されている。また、マウスのCTを挫滅させると、GI応答は3週目から、GS応答は4週目から再発現することが明らかとなっている。このことから、GS、GI経路の味細胞-味神経間連絡に関わるガイダンス分子の解析に挑む。野性型マウス(WT)にて様々な味刺激によるCT応答を記録した。続いてマウスのCT挫滅後1~5週目の1週ごとに、CT応答を記録した。うま味応答は3週目からうま味の相乗効果は4週目から検出され、グルマリン感受性応答の発現時期と一致した。Gタンパク質共役型受容体であるTIR1はTIR3と二量体をなすことでうま味を受容し、T1R2とT1R3の二量体は甘味を受容することが知られている。T1R1を遺伝的に欠損させたT1R1-KOマウス(KO)を用いて、様々な味刺激に対するCT応答を記録した。うま味の相乗効果はWTに比べてKOで大きく減少していた。さらに甘味に対するCT応答もWTに比べてKOマウスでは有意に減少した。このことからも、うま味の相乗効果はGS経路を経る可能性が示唆された。またKOマウスの単一味細胞での応答においても、うま味の相乗効果は減少していた。味細胞のSingle cell RT-PCRにおいて、T1R1、T1R2、T1R3が同一の細胞に発現していることがわかった。このことから、うま味の相乗効果と甘味の一部は細胞レベルでも同一のGS経路を経ている可能性が示唆された。