著者
楯 直子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、アルツハイマー病患者の脳の老人斑を構成するアミロイドβペプチド(Aβ)の中に通常のL-体から異性化したD-アスパラギン酸(D-Asp)が確認されている。Aβはアミノ酸42残基より成り、1、7、23位にAspが存在する。AspがD-体に異性化した各種D-Asp含有Aβについて、構造と線維化、凝集体形成について解析し、[D-Asp23] Aβは線維化・凝集体形成速度が顕著に大きくなることを明らかにした。また、老人斑中では正常型Aβと各種D-Asp含有Aβが混在しているが、互いに線維化や凝集体形成の速度や進行度に影響を及ぼすことはないことも解明した。さらにD-Asp含有N末端フラグメントAβ1-23は全長Aβの線維化・凝集体形成を促進することを見出した。以上の結果より、アルツハイマー病発症に関わるAβ凝集現象の制御において、Aβ-23部位が重要な鍵を握っていることが明らかとなった。