著者
赤石 樹泰
出版者
武蔵野大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

クルクミン誘導体CNB-001には、経口で正常ラットの記憶力を高める効果が見出されたため、アルツハイマー病治療薬開発のリード化合物として注目されている。本研究では、主に海馬スライス標本を用いた電気生理学的検討により、その作用機序の解明を試みたところ、CNB-001はMAPキナーゼやPKC経路には影響せずに、NMDA受容体ならびにCaMKⅡ依存性機構により、海馬における記憶形成の分子過程である長期増強現象(LTP)を促進することが明らかとなった。
著者
川原 正博 水野 大
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

カルノシン(βアラニル ヒスチジン)の神経保護作用メカニズムを検討した結果、カルノシンおよびその誘導体であるアンセリンは、小胞体ストレスを抑制することによって亜鉛の神経毒性を軽減することが判明した。さらに、thapsigarginやtunicamycinなどの小胞体ストレス誘導剤による細胞死に対しても保護作用を示すことも判明した。さらに、カルノシンの経口投与はlipopolyssccharide誘発性の肺疾患に関しても保護作用を示すことが判明した。カルノシン及び類縁化合物のHPLCを用いる簡便な定量系を開発しており、神経疾患の予防・治療薬としてのカルノシンの活用の可能性が明らかとなった。
著者
今福 理博
出版者
武蔵野大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

内受容感覚とは,空腹,体温,心拍などの身体内部の状態を知覚することである。内受容感覚は,他者とかかわる上で必要となる社会的認知や,子どもの生存可能性を高める養育行動に寄与している可能性が議論されている。しかし,これまでの研究は成人対象のものがほとんどであり,発達初期において内受容感覚が社会的認知発達に果たす役割は明らかでない。本研究では,乳幼児を対象に,社会的認知発達における内受容感覚の役割を実証的に解明する。更に,養育者 (母親) の内受容感覚の個人差が,養育行動や育児ストレスに及ぼす影響を明らかにし,社会的認知発達をボトムアップ的に再考する。
著者
青木 裕子 古田 徹也 大谷 弘 片山 文雄 石川 敬史 佐藤 空 野村 智清
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究グループは科研費受給期間中コンスタントに研究成果を発表した。主な活動を四点挙げる。第一に「常識と啓蒙研究会」を年二回開催した。第二に、2018年3月に日本イギリス哲学会第42回研究大会においてセッション「コモン・センスとコンヴェンション―18世紀英米思想における人間生活の基盤」のコーディネイトと研究報告を行った。第三に、2019年10月に武蔵野大学政治経済研究所主催のオール英語の国際シンポジウムをコーディネイトし、本研究グループと米国の研究者が研究報告を行った。第四に、2020年2月には本研究プロジェクトの最終報告として『「常識」によって新たな世界は切り拓けるか』(晃洋書房)を出版した。
著者
楯 直子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近年、アルツハイマー病患者の脳の老人斑を構成するアミロイドβペプチド(Aβ)の中に通常のL-体から異性化したD-アスパラギン酸(D-Asp)が確認されている。Aβはアミノ酸42残基より成り、1、7、23位にAspが存在する。AspがD-体に異性化した各種D-Asp含有Aβについて、構造と線維化、凝集体形成について解析し、[D-Asp23] Aβは線維化・凝集体形成速度が顕著に大きくなることを明らかにした。また、老人斑中では正常型Aβと各種D-Asp含有Aβが混在しているが、互いに線維化や凝集体形成の速度や進行度に影響を及ぼすことはないことも解明した。さらにD-Asp含有N末端フラグメントAβ1-23は全長Aβの線維化・凝集体形成を促進することを見出した。以上の結果より、アルツハイマー病発症に関わるAβ凝集現象の制御において、Aβ-23部位が重要な鍵を握っていることが明らかとなった。
著者
市瀬 浩志
出版者
武蔵野大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

本研究は、多様な生理活性物質の生産者として放線菌に注目し、代表的ポリケタイド二次代謝産物アクノロジン(ACT)を取り上げ、その生合成に必要な20段階の酵素反応を試験管内で完全再構成することを基盤とする。諸反応中には、単機能型縮合酵素による反復的炭素鎖構築反応、酵素反応中間体の支持タンパク質からの遊離機構および基本骨格修飾反応における酵素基質認識、単機能型酵素による多段階反応の制等が含まれる。本研究では、ACT生合成再構成系を材料として、酵素学的解析、各種機器分析を用いた酵素反応の精密解析、タンパクモデリング法を含む情報科学的解析を駆使した上記問題の網羅的解明を目的とする。本年度の研究計画として、ACT基本骨格形成反応(反復的炭素鎖構築反応)の再構成系の構築を設定し、以下の成果を得た。ACTの基本骨格形成に必須のタンパク群、すなわちActtI-ORF1(ケト縮合酵素α)、ActII-ORF2(ケト縮合酵素β)、ActI-ORF3(アシルキャリアタンパク)、ActIII(ケト還元酵素)、sfp(フォスホパンテニルトランスフェラーゼ)、fabD(アシルトランスフェラーゼ)の発現を放線菌および大腸菌の宿主を用いて実施し、組換精製タンパクとして調製した。これらのタンパクを用い、マロニルCoAを基質としたin Vitroでの生合成反応の再構築を試みたところ、7段階のケト縮合反応を経て生成するオクタケタイド鎖の閉環生成物であるSEK4/SEK4bとともにオクタケタイド鎖の炭素9位還元後の閉鎖生成物であるmutactinの生成がHPLCおよびLC/MSで確認された。この結果は、ACT生合成に関わる炭素骨格形成反応に関わる単機能縮合酵素による反復的炭素鎖構築反応を再現したものであり、本年度の研究計画の一部を達成することができた。
著者
伊藤 清美 工藤 敏之
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

複数の酵素で代謝される薬物では、併用薬による酵素阻害の影響を定量的に評価するために、代謝における各酵素の寄与率を正確に見積もることが重要である。レパグリニドの代謝におけるCYP2C8およびCYP3A4の寄与率について推定した結果から、in vitro代謝試験において緩衝液条件に留意することの重要性が確認された。また、クラリスロマイシンとグリベンクラミドの相互作用について生理学的薬物速度論(PBPK)モデル解析を実施し、肝取り込み阻害と肝代謝阻害の両者の関与を明らかにした。本研究と同様なPBPK解析の実施により、効率的な医薬品開発および複数薬物の併用による安全な薬物治療に資することが期待される。
著者
堀井 惠子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

国内外からの社会的ニーズの高い留学生の就職支援のためのビジネス日本語教育のための調査研究として、中国、ベトナム、タイなどの海外の日系企業の人事担当者ならびに元留学生にニーズ調査を行った。調査結果の分析から、ロールプレイ教材、プロジェクト型教材を開発、教育実践を行い改善をはかりながら、教授法を構築した。口頭表現教育、文書表現教育、読解教育の実践をまとめビジネス日本語教育の評価としてCAN-DO-STATEMENTの施策を試みた。研究の発信と活性化のために日本語教育学会テーマ研究会としてビジネス日本語研究会を設立した。
著者
松本 弘子
出版者
武蔵野大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

申請者はこれまで民生委員に対して、在宅精神障害者とどのようなかかわりをもっているのかについてインタビューを行ってきた。これらの結果から、地域で精神障害者に関わったことのある民生委員のうち、対応の困難を抱えていることがわかった。また多くの民生委員が対応に困ったときには役所の担当もしくは、保健師に支援してほしいと考えていることが明らかになった。そこで今年度は、民生委員から精神障害者の対応に関する相談を受けたことがある保健師4名に合計5回のインタビューを行い、民生委員と保健師のかかわりについて情報収集を行った。4名のうち、3名は民生委員とともに精神障害者に関する訪問等の支援を行ったことがあり、1名は民生委員から精神障害者に関する相談を受けたことはあるが、実際に訪問等の支援を行ったことはなかった。保健師がこれまでに民生委員から受けた相談内容としては、「いつもと様子が違うので訪問してほしい」「薬を飲んでいないと本人が言っていたけれど、どうすればよいか」「最近道で会ったときに太っていて心配なので、栄誉指導をしてほしい」等予防的な視点でかかわりを求めるものと、医療的なことに関する疑問等が多くみられた。保健師は自分たちを民生委員がうまく利用してくれるといいと願い、そのためには日ごろからのコミュニケーションや連携の必要があると感じていた。また1度かかわりをもった民生委員とは、見かけたときに声をかけたり、ケース以外のことでも積極的にかかわりをもつことによって、普段から連絡がしやすいような環境を整える努力をしていた。
著者
妹尾 弘子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的はイタリアの精神病院の閉鎖に伴う看護師の地域精神保健活動の実態を明らかにすることである。当時イタリアのトリエステで改革に携わった看護師等にインタビューを行い内容の分析を行った。看護師達は改革に伴い、患者を地域に戻すために病院内から自分達も積極的に地域に出ていき、住民に理解を得るためのミーティングや訪問を頻回に行うなど、院内での看護にとどまらず生活者としての当事者を支えた。