著者
榊原 七重
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.41-49, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
37

眼は、成長発達、さらに加齢により変化する。臨床経過観察において基準となる屈折経年変化の正常データは重要である。今回、ほとんどのデータは古いものであったが、各種の検査で得られている生体計測データはなお有益である。そこで、これらの屈折要素について文献をレビューし、屈折経年変化について考察し、その特徴を明らかにしようと試みた。 屈折状態は、主な屈折要素である角膜、水晶体、眼軸長により形作られる。 角膜屈折力は、新生児で最も強く、4~9歳までに成人と同程度まで減少する。水晶体は生涯を通して変化するが、新生児は老年期の2倍の厚さと屈折力を持つ。眼軸はその成長に3つの段階があり、18か月までに急激に、その後5歳まではややゆるやかに、その後さらにゆるやかに13歳頃まで伸展し近視化し、それ以降の伸びはほとんど無い。これら角膜屈折力、水晶体屈折力、眼軸長を基に、SRK式を用い、各屈折要素から全屈折力を算出すると、2歳以降に近視化することが示されたが、同時に9歳までは遠視化する可能性が考えられた。 屈折は、生直後は遠視にピークを持つ正規分布であると報告されているが、学童期は正視、中高生においては正視と近視にその分布は集中化する。遺伝因子、環境因子などによって屈折の変化には個人差があり、屈折分布には世代間差があることが知られている。これらのことから、今後日々の臨床において、正確でその時代にあったデータの収集を行いつつその利用が必要であると考えられた。