著者
榊原 保正 久木 博 酒井 睦司 内野 規人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1893-1898, 1976
被引用文献数
2

2種のニッケル錯体触媒,Ni(acac)2-Al(qH<sub>5</sub>)3CI3-P(C6H<sub>5</sub>)3(触媒1,Ni:Al2:P=1:103)およびNiBr<sub>2</sub>[P(C6H<sub>5</sub>)3]2(触媒豆)による共役ジエン,1,3-ブタジエン(BD),インプレン(IP),2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン(DMBD)のモノエンへの選択的水素化反応について研究した。触媒1は活性が高く,水素化はトルエン中,20atmH<sub>2</sub>,室温で進行するが,競争反応である重合のために,水素化物選択率はBD38%<IP67%<DMBD91%とジエンによる大きな相違が認められた。触媒IIでは,好溶媒エタノール中でも高温(BD75℃~DMBD200℃)を要し,水素化物選択率はBD88%>IP84%>DMBD40%と触媒1の場合と逆の順であった。しかし,すべての場合において,水素化物中のモノエン生成比率は高く,高転化率においてモノエンが90%以上を占めた。実験結果および参考知見に基づいて,触媒1によるDMBDの水素化に対し反応機構を提案するとともに,実験結果,とくに両触媒の活性ならびに3種のジエンの反応性の相違について考察を行なった。