著者
ビスピンク ラインハルト シュルテン トアステン 榊原 嘉明
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.153-175, 2014

ドイツにおいて協約拘束がしだいに低下し,また一般的拘束力の意義が失われたことによってさらにその傾向が強まったことを背景に,ここ数年,どの程度,(法)政策的な改革を通じてドイツの労働協約システムが再び安定化されうるかについての議論が,盛んに行われるようになってきている。その議論は,いまやドイツの政治的課題にまで達しており,2013年9月の連邦議会選挙前における野党各党からは,それぞれ,一般的拘束力宣言の内容的拡大と手続的簡素化を指向する提案がなされた。もっとも,このような提案は,伝統的に協約自治の思想をその大きな特徴としてきたドイツの労働協約システムにとって,ある種,国家が担うべき役割をより大きなものへと転換することを意味している。 本稿は,今日的な一般的拘束力宣言改革論議の背景にあるドイツ労働協約システムの空洞化と一般的拘束力宣言の利用低下の諸相を明らかにするとともに,その改革論議を整理・検討した書き下ろし論稿の翻訳である。