著者
榊原 憲
出版者
日本テレワーク学会
雑誌
日本テレワーク学会研究発表大会予稿集
巻号頁・発行日
no.11, pp.123-126, 2009-06-20

「子は親の背中を見て育つ」といわれるが,親が集合勤務を行うため出勤する姿を見て育った子供,あるいは集合勤務オフィスを舞台にしたテレビドラマなどを日常的に視聴して育った子供に対して,分散勤務(テレワーク)ではなく集合勤務が当たり前であるという職業観意識の刷り込みが行われている可能性,およびそれが,子供が将来勤務者になる場合の勤務形態希望に影響する可能性がある.そこで現在小学校3年から6年に在籍する合計112人の学童に対して,企業などの組織に就業する場合でもICT技術を用いて在宅で勤務できることの説明を小学校クラス担任教諭からしたうえで,希望勤務場所に関する意識調査を,自由記述を含む質問紙調査法を用いた質的調査として行った.その結果,企業テレワーク実施可能職業を将来希望すると回答した学童のうち,在宅勤務ではなく通勤による集合勤務を希望する者の割合は約77%で,学年があがるにつれ集合勤務を希望する者が増える傾向が見られた.また,自由記述回答の内容には,「在宅では仕事をする感覚が得られずよくない」,「集合勤務なら同僚と楽しく仕事ができる」等の社会心理的意識,または教師の説明をきっかけとした前意識の顕在化と思われる回答が見られた.これらの意識は従来研究による企業テレワーク阻害要因の枠を超えないが,既に学童期に意識形成されていることが判明したので報告する.