著者
江端 弘樹 佐藤 義夫 福江 正治 嶌田 智 榎田 和彦
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.110-118, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29

静岡県静岡市三保半島に位置する東海大学海洋学部において, 地下約50mから地下水を汲み上げて, その水質を2003年8月~2004年12月に調査した. その結果について水産養殖用水として利用することを目的に評価を行った. その結果, 地下水利用の利点として,(1) 海水とほぼ同じ水質,(2) 安定した水温, 塩分およびpH,(3) 富栄養性が確認された. 一方, 欠点として,(1) 低溶存酸素量,(2) 高アンモニウム塩濃度,(3) 高マンガン濃度および二酸化マンガンの生成 (水槽, 給排水管および養殖生物への沈着, および海藻の生育阻害) が挙げられた. そこで, 地下水のアンモニウム塩とマンガン濃度を低減させるために, 微生物による酸化物生成能を活用した水質改善装置を考案した. その装置を使用した結果, 水産動植物の飼育・養殖・培養に適すると思われるレベルにまでそれらの濃度を低減できた. また, 微生物の繁殖基盤として劣化の無い炭素繊維を使用したことで装置の維持コストを低減させることが可能となった. 本研究の成果によって品質的に問題のある地下海水の水産利用が可能となり, それによって, 陸上養殖事業のさらなる発展が期待できると思われる.