著者
内村 真之 Faye Etienne Jean 嶌田 智 小倉 剛 井上 徹教 中村 由行
出版者
国立科学博物館
雑誌
Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany (ISSN:03852431)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.129-150, 2006-09
被引用文献数
1

Halophila japonica sp. nov. is described from Japan. Although this entity has long been referred to as H. ovalis, data obtained from detailed morphological examination of field collections and herbarium specimens, geographical distribution records and ITS sequence analyses demonstrate that it is distinguishable from all other members of this genus and can be recognized as a new species. H. japonica is presently reported to occur from Ibusuki (Kagoshima Prefecture, Kyushu region, Japan) in the south, to Mutsu Bay (Aomori Prefecture, Honshu region, Japan) in the north. In order to better characterize H. ovalis materials from Japan, some observations on this species were also provided. As an outcome of this study, there are now four species of Halophila known from Japan: H. ovalis, H. euphlebia, H. decipiens and H. japonica.
著者
嶌田 智
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

緑藻アオサ・アオノリ類は世界中の沿岸域で最も目立つ海藻類で、世界で約200種、日本で17種が報告されている。この仲間は体制が単純で分類形質が少なく、しかもその形質状態が生育環境で大きく変化してしまうため、現在でも分類学的な混乱が生じている。本研究では前年度に引き続き、日本各地での採集、系統分類学的な研究をすることで本類の種多様性を明らかにしようと試みた。その結果、博多湾や高知県の浦ノ内湾でグリーンタイドを引き起こしているアオサが新種であると判明し、新種記載した。また、蓄積されたDNA配列データを元に輸入アオノリや日本各地のグリーンタイド原因種の種鑑定を行った。DNA鑑定については、横浜税関での輸入アオノリ、千葉県三番瀬や愛知県三河湾のグリーンタイドを引き起こしている原因種のDNA鑑定などの依頼を受けた。またスジアオノリは四国・四万十川の高級アオノリとして知られるように低塩分環境の河川においても生育している。このような河川アオノリはこれまで四国でのみ報告されていたが、本研究で北海道、島根(中海)、種子島、沖縄本島、石垣島の河川でも発見でき、河川アオノリは広範囲に分布すると考えられた。これら河川アオノリの種多様性解析を行ったところ、少なくとも4種の存在が確認できた。そのうちの1種、海産ウスバアオノリと同種と考えられた河川アオノリに注目し、さらにその分布域拡大の方向性、環境適応の回数・起源の解明のため分子生物地理学的解析を行った。その結果、河川アオノリと海産ウスバアオノリには遺伝的に大きなギャップが生じており、河川に適応できたのは進化の歴史上たった1回であることが示唆された。
著者
江端 弘樹 佐藤 義夫 福江 正治 嶌田 智 榎田 和彦
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.110-118, 2006 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29

静岡県静岡市三保半島に位置する東海大学海洋学部において, 地下約50mから地下水を汲み上げて, その水質を2003年8月~2004年12月に調査した. その結果について水産養殖用水として利用することを目的に評価を行った. その結果, 地下水利用の利点として,(1) 海水とほぼ同じ水質,(2) 安定した水温, 塩分およびpH,(3) 富栄養性が確認された. 一方, 欠点として,(1) 低溶存酸素量,(2) 高アンモニウム塩濃度,(3) 高マンガン濃度および二酸化マンガンの生成 (水槽, 給排水管および養殖生物への沈着, および海藻の生育阻害) が挙げられた. そこで, 地下水のアンモニウム塩とマンガン濃度を低減させるために, 微生物による酸化物生成能を活用した水質改善装置を考案した. その装置を使用した結果, 水産動植物の飼育・養殖・培養に適すると思われるレベルにまでそれらの濃度を低減できた. また, 微生物の繁殖基盤として劣化の無い炭素繊維を使用したことで装置の維持コストを低減させることが可能となった. 本研究の成果によって品質的に問題のある地下海水の水産利用が可能となり, それによって, 陸上養殖事業のさらなる発展が期待できると思われる.
著者
津田 正史 岡本 由美子 嶌田 智
出版者
高知大学海洋生物教育研究センター
雑誌
Bulletin of marine sciences and fisheries, Kochi University (ISSN:03879763)
巻号頁・発行日
no.25, pp.1-4, 2007-03

日本には、緑藻237種、褐藻307種、紅藻869種の計1413種の海藻類が生育している。各地域により生育する海藻類は異なり、例えば琉球列島にはカサノリ類を代表する緑藻類が多く、緑藻109種、褐藻72種、紅藻194種の計375種が生育し、一方、北海道にはコンブ類などの褐藻類が多く、緑藻42種、褐藻98種、紅藻172種の計312種が生育している。海藻類は食用としての利用が多いが、最近は、機能性食品、化粧品、医化学用基剤、肥料、飼料など多岐にわたって利用されている。また、医薬品としての利用につながるような海藻類のMRSAに対する抗菌性や、抗腫瘍活性も報告されている。ヒトヘルペスウイルスの一種であるEpstein-Barrウイルス(EBV)は、バーキットリンパ腫や免疫抑制患者の日和見リンパ球増殖症、ホジキンリンパ腫などのB細胞性腫瘍だけでなく上咽頭癌、胃癌などの上皮性腫瘍やさまざまな組織腫瘍に関連していることがわかっている。また、小児に多くみられる慢性活動性EBV感染症や種痘様水疱症の原因ウイルスでもある。エイズの日和見感染症であるカポジ肉腫は、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)感染により発症する。これらウイルスは、既存の抗ウイルス薬は無効であり、通常の抗がん化学療法や放射線療法に対しても抵抗性や易再発性のものが多い。本研究では、北海道沿岸から30サンプル27種の海藻類を採集し、これらヘルペスウイルスに対する抗ウイルス活性について調査した。
著者
寺田 竜太 ニシハラ グレゴリー・ナオキ 嶌田 智
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

九州南部は温帯と亜熱帯性海産植物の分布推移帯(エコトーン)に位置し,温帯域に見られる種類の多くは当地が分布南限となっている。本研究では,温帯域で藻場を構成する16種の分布南限群落の個体群動態を明らかにすると共に,培養試験や光合成活性の結果を基に,温度や光の耐性やストレスの影響を解明した。光合成活性の測定は,藻場構成種16種と共に食用紅藻9種も用い,様々な水温,光条件における純光合成速度や光量子収率(Fv/Fm),電子伝達速度活性(rETR)を測定した。その結果,分布南限の個体群では寿命の短命化や繁茂期間の短縮などが顕著に見られ,高水温の環境が各種の繁茂に影響を与えていると推察された。多くの種において,純光合成速度やFv/Fm,rETRは28℃以上で低下し,最高30℃に達する生育地の夏季水温がこれ以上増加すると,群落の生残に著しい影響が出る可能性が示唆された。