- 著者
-
小宮山 敦
樋口 司
小池 健一
- 出版者
- 信州大学
- 雑誌
- 国際学術研究
- 巻号頁・発行日
- 1996
チェルノブイリ原発事故の放射線汚染による免疫異常と発がんとの関連性を明らかにする目的で、ベラル-シ共和国の高汚染地域住民について疫学的検査を行うとともに、がん発生の調査を実施した。1.免疫学的検査成績(1)白血球数(好中球、リンパ球)はほぼ正常であり、新たな数的変化はなかった。免疫グロブリンおよび補体にも明らかな低下傾向はみられず、一部の小児ではかえって高値を示した。(2)NK細胞上の接着因子(CD2、11a、18、69)の発現は正常であった。(3)NK細胞活性は、これまでと同様に、住民の約30%において低下または亢進を示していた。したがって、NK細胞機能異常が急速に進行してる兆候はなかった。2.染色体脆弱性やがん遺伝子検索のためにリンパ球を採取し保存できた。3.小児白血病発生の状況チェチェルスク地区の小児のなかで、1992年からNK細胞の異常が見いだされており、1997年に健康調査できた12名では、白血病などの小児がんの発生はなかった。ゴメリ州立病院小児血液部門における小児白血病発生頻度は、1997年度に明らかな変動はみられなかった。4.この研究調査と並行して、現地における小児白血病治療の一層の改善を目指して、末梢血幹細胞移植の実践指導を2例について行った。