- 著者
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樋田 一徳
- 出版者
- 川崎医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2007
本研究は、報告者のこれ迄の解析結果を基盤として、形態的特徴のみならず、化学的、電気生理学的側面からの機能を同定した嗅球ニューロンのシナプス結合を解析したものである。具体的には、米メリーランド大学・Michael T.Shipley教授の研究グループと共同実験により、tyrosine hydroxylase (TH)、glutamic acide decarboxylase (GAD)といった、嗅球ニューロンの代表的な化学マーカーをGFP標識したトランスジェニックマウスを用い、パッチクランプ法により各ニューロンの刺激反応性を比較検討した。その結果、入力の嗅神経を刺激した結果、スライス嗅球における介在ニューロン、投射ニューロンの電気生理学的・薬理学的特性が多様であり、また同じ化学的性質を有するニューロン群の中でも、嗅神経刺激に対する反応性に少なくとも2つのタイプがある事などがわかった。更に記録後にbiocytinを注入してニューロンの全体像を明らかにし、更にTH、GAD65ニューロンについて、抗GFP抗体を用いて免疫電顕によりシナプス結合を解析し、シナプス入力の頻度が異なることがわかった。遺伝学的に同定された化学的性質、形態的特徴、シナプスなどを対応し、異種のニューロン問での違いを明らかにする事により、ニューロンの多様性に基づく嗅覚神経回路の精巧さが示された。