著者
松本 達郎 横井 活城
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.146, pp.42-48, 1987-07-30
被引用文献数
1

この属は小型で奇妙な形質を示すが, 北米テキサス, 欧州(フランス等), ソ連, マダガスカルの白亜系から5種が知られている。今回北海道雨竜郡朱鞠内地域のMy 3部層(たぶんセノマニアン下部)から横井と林俊一氏が採集した標本6個が同属の1種で, 既知のどの種とも識別されることがわかった。中でW. rochatiarum (d'Orbigny)(仏, チューロニアン産)とW. vermiculum (Shamard)(テキサスBritton層産)に類似するが, それらより更に小型で, scaphitoid形の螺環部も伸びた部分も相対的に幅広く(H<B), 住房(棒状部の中程以降)は外側部で鈍い肩が張り, 外面は丸いが, 内側面は平行でなくて内に傾く特徴がある。内面は平担か少しくぼむ。縫合線は図の通りでマダガスカルのセノマニアン産のに似る。完模式標本の殼口縁の側面にはラペットらしいものを認める。新種Worthoceras pacificumと命名して記述した。太平洋区では初めての産出記録である。