著者
横山 友貴 名倉 秀子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, pp.283, 2009

【目的】行事食は,毎年同じ時期に同じように繰り返される行事に準備され,稲作・農作物などの収穫と深く関わる料理,供物が多い.近年は核家族世帯が6割を占め,先祖を祭る行事(彼岸・盆)は希薄化する傾向がある.彼岸行事の実施率は,1979年から約30年間で80%から25%と減少し,都市部と地方の地域差もあるといわれている.そこで,会津地方の彼岸の行事を3世代家族の家庭から聞き書き調査し,その行事食の実態を把握することを目的とした.【方法】調査地は福島県会津地方の喜多方市(旧耶麻郡熱塩加納村),調査時期は2008年秋彼岸,翌年春彼岸の各1週間とした.調査家庭は,農業(兼業)を営み,3世代6人家族である.主に80代女性(1948年に嫁ぐ)に聞き書き,行事食の写真撮影も行った.【結果】彼岸の行事は仏壇へ仏膳を供え,家族が共食し,墓参りを行っていた.彼岸期間の仏膳は,朝・夕の2回を原則とし,中日(秋分の日)では朝・昼・夕の3回,お帰り(彼岸明け)は夕の時刻を早め朝・昼の2回であった.仏膳は精進料理を中心とし,おはぎ・団子が供えられていた.団子は,中日とお帰りの日のみ供えられ,異なる大きさであった.彼岸期間の家族の食事は,普段と同様に3回喫食され,食事内容では,日常食と同様で精進料理ではなかった.このように家族の食卓と仏膳は異なっていたが,1950年頃は家族の料理内容と仏膳が同じであったことが聞き書き調査によって分かった.団子・おはぎは喫食されていた.お帰りの日は墓参りをし,菓子を供えていた.同様に春彼岸についても検討を行った.