著者
赤塚 朋子 佐々木 和也 横山 弘美 大原 弘子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, 2016

<目的><br>&nbsp;&nbsp;衣生活領域の消費者教育を発達段階に応じて教材開発するための課題を抽出し、授業案を作成することを目的とした。<br><br><方法><br>&nbsp; 衣生活における消費者問題の把握と、衣服に関する知識を知るためのイメージマップ法と衣生活に関する実態を調査するためのアンケート調査を行った。<br><br><結果><br>1.衣生活における消費者問題の把握 <br>&nbsp; 県消費生活センターによれば、平成26年度の苦情相談件数上位5位の商品・サービスでは、19歳以下では1位「放送・コンテンツ等」、2位「履物」、3位「他の身の回り品/レンタル・リース・賃借」、5位「健康食品/書籍・印刷物/自動車/補習教育/役務その他」、20歳代では1位「放送・コンテンツ等」、2位「融資サービス」、3位「レンタル・リース・賃借」、4位「自動車」、5位「インターネット通信サービス」となっている。19歳以下で、2位、3位と上位に衣生活関連の消費者問題があることがわかった。<br>&nbsp; 衣生活に関する相談では、クリーニング・トラブル(しみ・変色・形状変化・破損・紛失など)、購入した商品に関する苦情(組成、耐久性、着心地など)、その他(柔軟剤、購入時および売却処分時のトラブル、製品に起因する事故など)があがった。関連して紹介があった事例では、着用で体にしみができたブラジャー、手にはめたところヌルヌルした手袋、詰め物が表示と違っていたこたつ布団など具体的であった。こうした衣生活における消費者問題が存在することの事例は、当事者にならなければ気が付かないことが多い。また実際に話を聞かなければ、原因が身に着けていた衣服であることも想像できない。県消費生活センターと連携することの重要性を痛感することとなった。<br><br>2.衣生活実態調査<br>(1)イメージマップ法 <br>&nbsp; 小学生、中学生、高校生、大学生に対して、衣服を中心に置き、そこから派生してイメージするワードをつなげてもらった。年齢が進むにつれて、アイテムの単語が多かったのが、衣服の成り立ちや手入れ、布の性質に関連する単語の出現が多くなり、大学生は衣服を環境面でとらえる割合も増えている。<br>(2)アンケート調査 <br>&nbsp; 主に中学生と高校生を対比して検討した。中学生から高校生へと年齢があがるにしたがって、衣生活での自分での行動が増えているようである。しかし、衣服を選ぶのは誰かの問いに対して、最も多いのは、両者ともに「自分と保護者」であることから、衣生活消費の面での自立が遅いことがうかがえる。衣服をインターネットで購入したことがあるかどうかの問いに対しては、中学生は半数に満たないが、高校生は約6割近かった。スマフォの所有率に比例すると考えられる。成長期のこの時期は、「服のサイズが合わなくなって着られなくなったから」、「長い間使用していてもう着られないと感じたから(例:布が薄くなるなど)」という理由で処分の対応をしていることがわかり、衣生活の消費の側面では、堅実さが垣間見られた。衣服の再利用やリメイクにも関心がないわけでもないこともわかった。<br><br>3.教材開発のための課題<br>&nbsp; 衣生活領域の消費者教育を発達段階に応じて教材開発するためには、1)衣生活をいつから自分で成り立たせているか、つまり衣生活の自立がいつから始まるかに大きく関係するため、その把握が重要であること、2)衣服の消費は既成品の中から選択することが多いため、その衣服がどのように作製され手元に届き、身に着け、最後はどうなるのかという一連の衣服のライフサイクルへの理解を知識としてどのように押さえるのか、3)購入時の知識は教材化しやすいが、管理・保存の知識・技術は実感を伴った教材になりにくいこと、4)ITの進展によるネットショッピングの普及により、身に着けるものでありながら、素材の安全性や繊維そのものの性質を知る機会をどう保障するのか、5)授業時間のない中、製作の場面を想定できる教材が必要だが、どうすればいいか、などの課題が抽出された。<br><br>4.授業案作成 <br>&nbsp;&nbsp;課題を受けて、発達段階に応じた授業案を検討した。