著者
大平 麻由佳 中川 元斗 大田 政史 石橋 康弘 有薗 幸司 横山 誠二 甲斐 穂高 山口 雅裕
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-42, 2015-03-31 (Released:2015-04-10)
参考文献数
58

亜鉛は、メッキや真鍮の原料などに広く用いられる工業的に重要な金属であり、人体の必須ミネラルでもある。一方、大量摂取は他の重金属と同様、ヒトを含めた生物にとって有害であり、日本においても環境基準が設定されている。本研究では、亜鉛暴露がメダカ仔魚に与える影響を検討した。塩化亜鉛溶液を用い、亜鉛イオンのメダカ仔魚に対する96時間後の半数致死濃度を求めたところ、5.4(5.2-5.7 95% CL)mg/Lであった。また、塩化ナトリウムやリン酸二水素ナトリウム共存下では、塩化亜鉛の毒性が大きく軽減され、特にリン酸二水素ナトリウムの毒性軽減効果が顕著だった。また、塩化亜鉛溶液に曝露した仔魚において、組織学的に重篤な異常は認められず、培養細胞で報告されている細胞増殖の抑制も認められなかった。以上の結果から、ナトリウム塩の種類によって亜鉛の急性毒性に対する軽減効果に違いがあることが確認された。また、培養系における細胞の傷害は個体レベルで生じる傷害を必ずしも反映していないことが示された。