著者
横山 隆志
出版者
公益財団法人がん研究会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Trib1とTrib2は過剰発現により急性骨髄性白血病 (AML) を誘導するが、私達はこのTrib1による白血病発症にはMEK1との直接結合を介したMAPキナーゼ経路の活性化とC/EBPαの分解が必須であることを報告している。一方でTrib1, Trib2共にホモノックアウト (KO) マウスには重篤な異常が見られず、正常組織における機能は不明な点が多い。本研究ではマウス13.5日胚と成体組織におけるTrib1/2の発現を調べ,両者の発現は一部重複するが多くの組織において両者の発現分布が異なることを示した。また造血においてはTrib1をノックアウトすると顆粒球分化の促進が見られ、C/EBPαとその標的である複数の分化制御遺伝子の発現が上昇することを明らかにした。このことからTrib1は正常造血においてC/EBPαの分解を介してその標的遺伝子を制御し、顆粒球分化を調節している可能性が考えられた。またTrib2 KOマウスでは分化の亢進は見られず、Trib1/2ダブルKOによってもTrib1シングルKOと同程度の顆粒球分化の促進しか見られなかった。正常骨髄におけるTrib1のmRNAを調べたところTrib2の約5倍発現量が多いことから。顆粒球分化の調節においてはTrib1がより優先的に機能していることが示された。