著者
横林 結 森 理恵 YUI YOKOBAYASHI RIE MORI
出版者
京都府立大学学術報告委員会
雑誌
京都府立大学学術報告 生命環境学 (ISSN:18826946)
巻号頁・発行日
no.61, pp.9-17, 2009-12-25

アジア太平洋戦争敗戦後の1950年前後の日本において, 洋裁・洋装の普及過程で注目された「直線裁ち」は, 洋服地と洋裁技術のないままに, 「和服」地と和裁の技術をもって洋服を身につける, という困難な課題に対する解決策であった。またそこに西洋の洋服とは違う, 「日本人に合った洋服」が求められることにもなった。本研究では, この時期に, 多くの服飾関係者や一般の人々が, 「日本人にとって洋服とは」という疑問につきあたり, 「和服」と洋服との折衷とも言える「直線裁ち」に活路を見出そうとしていたということ, また, 洋服に「和服」の手法を取り入れるという方向と, 「和服」に洋服の手法を取り入れるという方向との双方向があったことを明らかにした。加えて, 和服がほぼ儀礼服と化した現在と異なり, 1950年前後の時期は, 「日本人にふさわしい衣服」についての議論が活発であり, 「和服」と洋服のあり方や両者の関係についてもとらえ方が流動的であることを明らかにした。