- 著者
-
横田 恭平
- 出版者
- 環境技術学会
- 雑誌
- 環境技術 (ISSN:03889459)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.10, pp.536-544, 2016-10-20 (Released:2017-01-05)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
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本研究の目的は,火山噴火を予知するため,大分県の活火山である由布岳と九重山に近い温泉水の水質の変化から,最適な化学的な指標を提案することである.対象としたのは由布院温泉と長湯温泉で,長湯温泉においては炭酸成分を主成分とする九重山の火山ガスの影響が確認されている.対象とした成分は,イオンクロマトグラフ法,硫酸による滴定,ICP 発光分光分析法にて分析した20成分である.それぞれの変動係数(標準偏差と平均との比の百分率)のなかで,10%を下回ったのがMg2+,Ca2+,Cl-,HCO3-であり, 特にHCO3-は,およそ2.3~3.6%と低い値が確認された.長湯温泉については,炭酸成分を多く含む九重山のマグマの影響を受けていると報告されている.HCO3-は,変動係数が小さく,溶解度積から見ても炭酸成分が鉄と反応を起こすことが少ないことから,一般的に噴火予知で用いられている物理的な方法に加え,化学的な指標としてHCO3-は適していると考えられる.