著者
南 雅代 若木 重行 佐藤 亜聖 樫木 規秀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2020年度日本地球化学会第67回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.168, 2020 (Released:2021-01-29)

大阪府松原市立部遺跡出土蔵骨器に納められている火葬骨の年代測定・同位体分析を行ない、被葬者の死没年、死没地、食性等を探った。蔵骨器内の骨片は、黒色から白色までさまざま存在し、焼成温度にかなりのムラがあったと考えられる。X線回折分析から、黒色骨片は600−700℃の被熱を受けたこと、白色骨片は750℃以上の高温の熱を被り、高いアパタイトの結晶度を有することがわかった。白色骨片と黒色骨片は異なる87Sr/86Sr値を示し、黒色骨片は埋没時に土壌間隙水とSr同位体交換反応を生じてSr同位体組成が変化していることが明らかになった。白色骨片4試料の14C較正暦年代は770−900 cal ADとなり、奈良時代後半という考古学知見と一致した。また、安定Sr同位体比 (δ88Sr)から、被葬者は比較的栄養段階の高い食性であったことが示唆された。