著者
藤守 義光 樫田 美雄 岡田 光弘 寺嶋 吉保
出版者
徳島大学
雑誌
徳島大学社会科学研究 (ISSN:09146377)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.57-73, 2007-02

本研究は,エスノメソドロジー研究,特にヴィデオ・エスノグラフィーという手法によって,医学教育におけるOSCEを分析したものである。あらかじめインタビューなどのフィールドワークを実施した上で,実際の試験場面をヴィデオ録画し,繰り返し検討する形で経験的な研究を行った。論文の前半でエスノメソドロジー研究,ヴィデオ・エスノグラフィ,フィールドワークといった調査の手続きについて詳しく述べた後,後半では,ヴィデオ録画に基づき,OSCEに特徴的な論理について詳らかにした。OSCEは,特有の実践の論理を持つ。たとえば,「身体検査を行うという側面」と「医学知識の評価という側面」を不即不離に合わせ持っている。探求の結果,OSCEが,医学生,模擬患者,そして評価者がそれぞれの関心に基づいて,「身体検査をするという課題」と「試験として成り立たせるという課題」を重なり合わせながら,自分達に望まれているさまざまな役割を協調的に遂行していく形を取っていること,すなわち共同的な諸行為の特有の実践の論理を持った集積として理解できることがわかった。