著者
橋本 三嗣
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.41-50, 2001-06-30 (Released:2018-05-08)

本稿の目的は大学1年生と3年生の論理的思考力を調査し,その様相を明らかにすることである。そのために国立大学の大学1年生と3年生に対して調査を行い,調査対象者を専攻,学年,性別という3つの観点から分け,また調査結果を推論の型・問題の内容という視点から分析・考察した。そして中学校3年生の調査結果と比較した。その結果,次のことが明らかになった。(1)同じ学年で比較した場合,大学で数学を専攻している大学生は大学で数学を専攻していない大学生よりも調査得点が有意に高い。(2)大学で数学を専攻している大学生の集団に限り, 3年生が1年生より調査得点が有意に高い。(3)専攻別の大学生の集団の中には,女性が男性よりも調査得点が有意に高いものもある。(4)推論の型については,逆型と裏型の問題の正答率が低く,問題の内容については,日常的,仮想的な事柄の下での問題の正答率が低い。(5)調査結果に関して大学生を中学校3年生と比較した場合,大学生は中学校3年生より数学的な事柄の下での問題の正答率が高い。これらより,今回の調査で点数化した論理的思考力は,特に大学の数学を学ぶことで飛躍的に伸びると推測される。