- 著者
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橋本 佳奈子
小林 康江
- 出版者
- 一般社団法人 日本助産学会
- 雑誌
- 日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.1, pp.103-114, 2019 (Released:2019-06-30)
- 参考文献数
- 30
目 的緊急帝王切開で出産した初産婦の産後4か月までの出産に対する思いを明らかにする。方 法研究デザインはライフストーリー法を参考にした質的記述的研究である。母児ともに妊娠産褥経過が良好な緊急帝王切開で出産した初産婦3名に対し,診療録からデータ収集をした上で,半構成的面接を産後2週・4から6週・4か月の3回に縦断的に実施した。面接は出産体験について,体験したことや思考したことを自由に語ってもらった。結 果本研究では,3名の初産婦の緊急帝王切開に対する思いと,出産体験を意味づけるストーリーが語られた。母乳育児の成功体験により出産への後悔を払拭するA氏のストーリー,育児への自信と子供との絆を高めることで,経膣分娩への気持ちを整理し出産を肯定的に捉えていくB氏のストーリー,体験を語ることや自分がこの子の母親であると思える過程を経て,出産体験を意味づけしようとしているC氏のストーリーであった。緊急帝王切開に対する思いは,出産後育児を行う中で変化していた。結 論緊急帝王切開で出産した女性は,出産への自信や母親としての自信を喪失し,出産を不本意に思う気持ちと児が無事であったことに安心する気持ちの間で揺らいでいた。育児を行い子供や家族との関係を築く中から,産後4か月には緊急帝王切開であっても自分の出産に他ならない体験であると出産への思いは変化し,さらに第3者に思いを語ることで出産体験の受容は促進されていた。