著者
吉田 一浩 橋本 和美 越智 光一
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.317-324, 2009

分子構造が異なるフェニルシルセスキオキサン(ダブルデッカー型,かご型,ラダーライク型)をベースとするエポキシ樹脂をそれぞれ調製し,テトラエチレンペンタミンを硬化剤に用いて硬化物を作成した。得られた硬化物は熱重量分析と動的粘弾性で熱物性を評価し,引張り試験で機械特性を測定してエポキシ樹脂の構造と物性の相関を検討した。その結果,熱重量分析からは熱分解温度や分解挙動はエポキシ樹脂の構造に依存しないことが分かった。動的粘弾性の測定結果からは,各エポキシ樹脂のガラス転移温度は,ダブルデッカー型,かご型,ラダーライク型それぞれ87℃,80℃,67℃に確認した。貯蔵弾性率はガラス転移温度の前後で変化が小さく,広い温度範囲でゴム状平坦域を有することがわかった。引張り試験で得られる応力-歪み曲線から破壊エネルギーを求めたところ,最小はラダーライク型の1.3kJ/cm<sup>3</sup>,最大はダブルデッカー型の23.6kJ/cm<sup>3 </sup>であり,ダブルデッカー型はラダーライク型に対して約18倍大きい値を示し,ラダーライク型の弱点である脆さを改善できる可能性が得られた。以上の結果から,シルセスキオキサンを骨格とするエポキシ樹脂の構造と物性の間には,熱的性質はほとんど相関が見られなかったが,ガラス転移温度,機械特性はシルセスキオキサンの分子構造に依存することが判明した。