著者
垣内 弘
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.149-173, 1994-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
30
被引用文献数
3

エポキシ樹脂の歴史、さらに最近の生産量や使用々途について概観し、どの様な樹脂がどの様な用途に適しているかを述べた。つぎに従来からの汎用エポキシ樹脂の欠点である脆さを改良する手法、特に網状硬化物の特徴である耐熱性、低吸水性や曲げ強度を主とした機械的強度などの低下を避けることを目標とした新しいエポキシ樹脂の開発や、従来からの樹脂の改質剤の添加による改質法について述べる。
著者
高野 俊幸
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.213-223, 2010-09-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
78
被引用文献数
11

リグニンは,最も豊富に存在する天然の芳香族ポリマーであり,再生可能な資源として注目されている。しかしながら,リグニンは,紙パルプ製造プロセス,あるいはバイオエタノール製造プロセスの副生成物として得られているのみで,その利用は進んでいないのが現状である。本稿では,天然リグニン,および単離リグニンの化学構造,単離リグニンの利用例を紹介し,今後のリグニンの利用に向けての課題について述べる。

4 0 0 0 OA ラジカル重合

著者
上垣外 正己 佐藤 浩太郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.234-249, 2009 (Released:2013-03-29)
参考文献数
54
被引用文献数
3

ラジカル重合は,活性の高い中性のラジカル種を成長種とする重合反応であり,古くから学問的にもさまざまな研究がなされてきた。一方では,その高い反応性と汎用性,水などの極性物質に対する高い耐性から,工業的にも最も広く用いられている重合の一つである。さらに近年では,リビングラジカル重合の開発により,さまざまな精密高分子合成にも用いられるようになり,ラジカル重合は新たな展開を迎えている。本稿では,ラジカル重合性モノマー,ラジカル重合における開始,成長,停止,連鎖移動反応の 4 つの素反応,ラジカル共重合など古典的なラジカル重合における基礎的な内容から,リビングラジカル重合,さらにラジカル重合における立体構造制御にいたる最近の発展について概説する。
著者
中村 茂夫
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.26-38, 1985-03-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

ねじり振子における繊維, フィルム, 棒状試験片のかわりに, ガラス繊維の組紐 (Braid) と試料の複合体を用いて自由減衰振動の測定を行うTorsional Braid Analysis (TBA) の原理, 装置および熱硬化性樹脂への応用, とくに熱硬化過程の追跡, 熱硬化速度の決定, 硬化樹脂の力学的性質について解説する。熱硬化性樹脂の硬化反応の際に, その状態は液体状態からゴム状態を通ってガラス状態まで広い粘弾性領域にわたって変化するので, その全過程を1つの装置で連続的に測定することができるTBAは熱硬化性樹脂の研究に最も適すると言える。また, 熱硬化系の等温硬化過程における状態の変化を図示し, 硬化条件の設定および異なった反応系相互の比較を可能にするTTT図 (Time-temperature-transformation cure diagram) およびCHT図 (Continuous heating transformation cure diagram) についても説明し, その有用性を明らかにした。
著者
伊藤 幹彌 枡田 吉弘 弓削田 泰弘 高坂 智也
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-96, 2012-03-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

近年,鉄道車両の軽量化,破損の防止等を目的として樹脂ガラスの鉄道車両への適用が拡大している。しかし,コストの問題から在来線には積極的に適用はされていないのが現状である。在来線へ樹脂ガラス適用を拡大する うえで,樹脂ガラスの低廉化は重要な課題である。そこで著者らは樹脂ガラスのメンテナンスに関わるコスト削減を目的として長寿命化の可能性を検討した。具体的には,樹脂ガラスとして代表的な材料であり新幹線用の窓ガラスとしても使用実績のあるポリカーボネート樹脂(PC)を主な対象として各種初期特性,耐候性劣化条件における特性変化を測定した。また,劣化評価の手法として色変化に着目し,同評価手法の樹脂ガラスへの適用性についても検討した。
著者
森 大輔
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.285-289, 2014-11-10 (Released:2015-01-21)
参考文献数
10

天然樹脂セラックは,体長0.6 mm 前後のラックカイガラムシがマメ科,クワ科など特定の樹木(母樹)の枝に分泌する樹枝状物質を精製したものである。セラックという言葉はShell(貝殻)+Lac(多数)が語源となっており,Shellac とはラックカイガラムシの分泌物が貝殻状になることに由来し,Lac はヒンズー語のLakh(10 万)及びサンスクリット語のLaksha(10 万)より由来した言葉で,ラックカイガラムシが木に何万と密集している状況を表したものである(Fig. 1)。ラックカイガラムシの生育条件は亜熱帯地方が 適し,タイ・インドが二大産地となっている。 また,産業革命以降,天然樹脂の中で唯一の熱硬化性樹脂として,木工塗料を始め,工業用材料などに幅広く使用されてきたが,石油化学の発達につれ,合成樹脂万能の風潮になり,セラックは天然物の安全性とセラックでしか得られない物性を利用した用途以外は次 セラックは紀元前2000 年頃迄遡ることができる。 第に需要が減少していった。しかし,近年の環境配慮や資源の有効利用の面,人体への安全面から,セラックが再び見直されるようになってきている。
著者
古沢 敏
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.169-183, 1989-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
107
被引用文献数
1

不飽和ポリエステル樹脂は, 1953年に国産化されて以来, ボタン, 化粧板などの非FRP用, 住宅機材, 舟艇, タンク, 工業部品などのFRP用マトリックス樹脂として広範に用いられ, 生産高は1988年に過去最高の23万トンに達した。約80%を占めるFRP用においては, 成形法も従来のハンドレイアップを中心とした成形法から加熱加圧成形法への移行が年々強まりマトリックス樹脂もこれに適した開発が行われている。さらに複合材としての高機能化に対応すべくエポキシ樹脂, ウレタン樹脂, アクリル樹脂との境界領域における樹脂開発が自動車分野への応用を目的として行われている。FRP用を中心に, 不飽和ポリエステル樹脂およびその周辺樹脂の高機能化について最近の技術動向を述べる。
著者
清水 兵衛 宮脇 孝久 村上 司 小畑 敬祐 山崎 聡
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.310-316, 2011-11-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
8

芳香脂肪族の構造を有するキシリレンジイソシアネート(XDI)の特性及びその誘導体であるXDI-トリメチロールプロパン(TMP)アダクト体の塗料用硬化剤としての性質を調査した。XDI は,イソシアネート基と芳香環がメチレン基を介して結合した芳香脂肪族のポリイソシアネートであり,芳香族および脂肪・脂環族ポリイソシアネートとは異なった性質を示した。この特徴ある構造に基づく性質を活かして,塗料,接着剤等への用途展開が期待できる。
著者
宮腰 哲雄 陸 榕 石村 敬久 本多 貴之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.224-232, 2010-09-10 (Released:2014-03-31)
参考文献数
27
被引用文献数
2

漆は古くから用いられてきた天然塗料で,その塗膜は艶があり優雅で美しいことから器物の装飾や華飾に用いられてきた。ウルシノキは日本や中国に生育しており,それから得られる樹液が漆液である。漆液の乾燥硬化は特殊で,高湿度下でラッカーゼ酵素の酸化作用で進行する。そのため漆液を塗装した器物を乾燥するには特別の設備が必要で,湿度や温度の管理が重要になる。そのことから漆液が自然乾燥する促進法についていろいろ研究されているがまだ本質的な改質に至っていない。本稿では,当研究室で行った漆の改質法としてくろめ返し漆やハイブリッド漆の開発について述べる。また金コロイドを用いたワインレッド様漆塗料の開発,ナノ漆の開発と,それを用いたインクジェットプリンターよる蒔絵製作法の開発など工業塗装への応用研究について概説する。
著者
野村 幸弘 佐藤 慎一 森 秀晴 遠藤 剛
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.106-116, 2008-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24

イソシアナート末端ポリウレタンと2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物 (シリル化剤) から, 新規なアルコキシシラン末端ポリウレタン (シリル化ポリウレタン) を合成した。シリル化剤は, 3-アミノプロピルトリアルコキシシランとアクリル酸エステルとの共役付加反応で合成した。得られたシリル化ポリウレタンの粘度は, アクリル酸エステルと反応させていない3-アミノプロピルトリアルコキシシランから誘導したシリル化ポリウレタンに対して低くなった。得られたシリル化ポリウレタンの硬化速度及び接着強さを比較したところ, シリル化剤のエステル部位のアルキル基が短いほど, 硬化が速いことが分かった。また, 引張せん断接着強さ及び接着性がシリル化率の影響を受け, シリル化率60%以上の条件では, シリル化率が低いほど接着性が高くなる傾向にあった。さらに, シリル化ポリウレタンの硬化触媒として, 三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体 (BF3-MEA) とジブチルスズジメトキシド (DBTDM) の性能比較を行った。その結果, DBTDMに比較して, BF3-MEAは触媒活性が高いこと及びシリル化ポリウレタン硬化物の熱安定性を低下させないことが分かった。以上のことから, シリル化ポリウレタンは湿気硬化型接着剤のベースポリマーとして, またBF3-MEAはシリル化ポリウレタンの効果的な硬化触媒として利用できることが分かった。
著者
石倉 慎一 奥出 芳隆
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.149-158, 1996

最近工業用塗料に耐酸性雨性を付与することが必要となり, これをきっかけにして新しい架橋反応系を塗料に導入する開発が盛んになっている。また, この分野では非脱離型の架橋反応をする塗料への潜在的な要求があり, この開発も続けられている。技術的には2液型常温反応系の高い反応性に着目し, その反応性官能基や触媒をブロックしたりマスクすることで貯蔵時の安定性を確保して, 1液型としようとするものが多い。このような開発事例に関し解説する。
著者
佐藤 千明
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー論文集 (ISSN:24333786)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.91-96, 2018-03-20 (Released:2020-03-14)
参考文献数
7

自動車車体などに適用が始まっている構造用接着技術の概要について解説する。高分子化学の進歩により,優れた特性を有する接着剤が登場し,溶接などの従来からある接合手段に置き換りつつある。しかし,接着接合の弱点を考慮した接合部の設計が重要で,これを無視した使用は問題を引き起こしかねない。本稿ではこれらの点についても言及する。
著者
井上 真由美
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-50, 1992-03-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
5

プラスチック材料は物理的にも化学的にも非常に安定した材料であるため, 材料の表面にカビや細菌が繁殖して変形・腐食が起こることは全くないと言うのが一般の常識かも知れない。しかしながら, 約40年にわたり極めて広範囲におよぶ各種材料の微生物災害研究を実施した結果, 40年間に研究を実施した約400件の項目のうち, その95%がプラスチック製品および材料に, カビや細菌が繁殖し, 微生物の生きた作用によって変形・腐食が発生することが確認された。従って, プラスチックの微生物による変形と腐食は極めて重要な研究課題ということができる。プラスチックが使用中に微生物の作用を受けるか否かを客観的に評価する方法を確立するとともに, 微生物に対する抵抗性を向上させるための研究の具体的な内容について述べる。
著者
高橋 昭雄
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.34-41, 2012-01-10 (Released:2014-04-22)
参考文献数
26
被引用文献数
4

省エネやCO2 排出量の削減を目的に,自動車,電車,産業機器類の電動化と電子制御化による効率向上が進 められている。このため半導体製品の高機能化と高電力密度化が求められ,半導体素子の発熱量は増加している。特に,ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)の出現とともにエレクトロニクス化が急速に進む自動車はFig. 1 に示すように,100 個に達する電子制御部品(ECU)が搭載されている。さらに,MEMS 技術が応用されたほぼ同数のセンサも使用されている。Fig. 2 に示すようにパワー密度の向上に伴 い電子制御系,電力制御系共に,高温での過酷な環境に長期間曝される。この環境に耐えて,デバイスを保護するための性能がこれら電子部品の封止材料および配線基板材料に必要となっている。また,数百アンペアに達する大電流が流れるパワーデバイスも使用されるため,200℃付近の高温に耐える,これまでにない長期耐熱性も要求される1),2)。エレクトロニクス実装の主体をなす半導体封止材やプリント配線基板材料には,エポキシ樹脂が使用され,耐熱性の点から改良が進められてきた。本論では,HEV,EV を対象としたパワーデバイスを実装するための高分子材料の現状と将来方向について研究状況も含めて総説する。
著者
永田 員也 真田 和昭
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.299-308, 2015-11-10 (Released:2016-01-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1

フィラーの利用分野は多岐わたり,技術体系も複雑であることから,本稿ではトリックスポリマーをゴムや熱硬化性樹脂などの架ポリマーに焦点を当て,コンポジットの材料設計にいてフィラーの視点から詳しく紹介したい。
著者
岡田 耕治 渡邉 洋輔 齊藤 梓 川上 勝 古川 英光
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.81-87, 2016-03-10 (Released:2016-05-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

3D プリンターが,「材料に合わせた方式でユーザーが設計した通りの構造物を造形する新たなツール」として注目され始めてからはや数年。この3D プリンターブームは,熱溶解積層法の特許失効による開発コストの低減,3D ソフトウェアのフリー化,インターネットによる情報の共有化が背景にあり,いまや個人レベルでのモノづくりを可能にした。一方,全く別の経緯で同時期に,著者らは3D ゲルプリンターを開発に着手しており,数百 μm オーダーで柔らかくて潤いのあるゲルの三次元造形に成功している。本稿では,従来の3D プリンターで使 用される樹脂や金属,セラミックなどドライマテリアルにはないゲルの優位性と,その特徴を生かしたゲル造形物の将来性,開発の経緯の一つである高強度ゲルの登場を述べながら,実際の造形方法・造形例について紹介する。既存の3D プリンターによるモノづくり革命をさらに加速するツールの一つとして,3D ゲルプリンターが活躍する日は近い。
著者
松好 弘明 川崎 真一 山田 和志 西村 寛之
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-37, 2015-01-20 (Released:2015-03-17)
参考文献数
14

低温焼成フッ素樹脂塗料を用いて,焼成温度を変えたコーティング膜を調製し,コーティング膜の物性と耐摩耗性を測定し,考察した。コーティング膜の焼成温度が高いほど鉛筆硬度,非粘着性,耐摩耗性が良好であった。 ATR-FTIR とESCA にて耐摩耗試験における摺動部と未摺動部のコーティング膜を分析した結果,コーティング膜の摺動部ではフッ素樹脂の減少が確認された。