著者
中川 翔太郎 橋本 明憲 高橋 俊樹
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
15

窓から室内に侵入したスギ花粉挙動を,数値流体力学と粒子軌道計算の連成シミュレーションにより解析した。シミュレーションには群馬大学で開発した“数値流体力学及び浮遊粒子状物質挙動の特性解析ツール群:CAMPAS”を用いた。本研究では,窓と換気扇を有する室内を想定し,大規模な換気時の室内花粉飛散を定量的に示し,また弱換気時の空気清浄機導入による花粉捕集効果を明らかにすることを目的とした。窓を花粉の侵入源とし,窓のある壁面に対して左側面壁奥上に換気扇がついているものとモデル化した。換気回数8.3回/hの大規模換気時における花粉の室内侵入を調べるため,床面への落下率,換気扇からの排出率,または落下花粉を計算した。窓の対面壁近傍,換気扇の下などに多数の花粉が床面へ落下することがわかった。次に換気回数1回/hの弱換気時に空気清浄機を稼働した際の花粉捕集を調べた。空気清浄機の設置位置は,右側面壁中央下部とした。捕集できる花粉数は落下花粉数の半分程度であることがわかった。また,空気清浄機の生成気流により,窓から侵入した花粉を広く拡散させることも明らかになった。
著者
橋本 明憲 高橋 俊樹 松本 健作 鵜崎 賢一
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.147-161, 2012 (Released:2012-12-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

家庭に於ける花粉除去手法として最も普及しているのは空気清浄機である。SubGrid-ScaleモデルとしてCoherent Structure Modelを用いたLES,粒子挙動シミュレーション,及びその解析や可視化を行う自作ソフトウェア群Computational fluid dynamics and Aerosol Motion Property Analysis Suite(CAMPAS)を開発し,縦5 m横5 m高さ2.5 mの室内床面中央に配置した前面吸気上面排気型の空気清浄機による,スギ花粉挙動を解析した。その結果,このモデルの空気清浄機は,室内に一様分布させた花粉の4割程度しか吸入できず,5割強の花粉を落下させてしまうことが分かった。また,空気清浄機の吸気面以外の面である側背面や,部屋壁面に花粉が衝突し,落下しやすいことが明らかになった。空気清浄機の吸気面前方領域に存在する花粉は吸入しやすく,また,後方領域の花粉も排気により再度上昇させることで吸入できることが判明した。空気清浄機が吸入しやすい,吸気面からの方位角θや仰角φが存在する。この角度の値は吸排気モデルに依存すると考えられる。従って,空気清浄機の吸排気仕様を変化させ,花粉を吸入できる領域を拡大することで,花粉除去率のさらなる向上が期待できる。