著者
岡田 浩明 長谷川 浩 橋本 知義 関口 博之 浦嶋 泰文
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.63-71, 2009
被引用文献数
3

有機栽培と慣行栽培との現実的な違いが土壌の生物性や理化学性に及ぼす影響を検討するためには、有機物施用のみの有機農家圃場(有機)と、化学肥料と化学農薬の使用に加え有機物施用も行う慣行農家圃場(慣行)との比較が不可欠である。2005年と2006年に東北地方のトマト農家温室で線虫群集構造を分析した。土壌の粒径組成、調査地点及び栽培季節の違いを考慮しても、栽培管理(有機と慣行との違い)は両年とも"捕食者+雑食者"群の密度およびStructure Indexに有意に影響を及ぼし、有機で値が高かった。2005年の栽培管理は線虫群集構造全体をも有意に説明し、分類群ごとでは、Dorylaimidaが有機の、DiplogasteridaeとAnguinidaeが慣行の指標となった。一方、2006年には群集全体への栽培管理の影響は有意ではなかった。しかしこの年も分類群ごとに見ると、DorylaimidaとDiplogasteridaeが各栽培管理様式の良い指標となった。個々の環境要因を説明変数として検討すると、土壌の粒径組成や細菌密度がこれらの線虫の密度に有意な影響を与えていたが、その解釈は十分にはできなかった。化学農薬の測定なども含めたさらなる調査が必要である。