著者
中森 泰三 藤原 直哉 松本 直幸 岡田 浩明
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
no.84, pp.5-9, 2009-03-31

持続可能な農業に向けて農業生態系の生物多様性に関心が高まっている.日本では農業生態系におけるトビムシの多様性に関する知見は限られている.そこで,我々は慣行および保全型畑地に加えて森林土壌およびリター堆肥におけるトビムシの種組成を明らかにした.総個体数および種数ともに慣行畑地より保全型畑地において多かった.また,畑地土壌からMesaphorura silvicola(Folsom)が日本から初めて得られたので合わせて報告する.
著者
岡田 浩明
出版者
Japanese Society for Root Research
雑誌
根の研究 (ISSN:09192182)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-6, 2002-03-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
7 5

土壌に生息する線虫は, その食性に基づいて5グループ程度に分けられる. そのうち, 物質循環との関わりが強い, 細菌食性線虫と糸状菌食性線虫が, 有機物の分解で生じる無機態窒素の生成量におよぼす影響を調べた実験を紹介した. 細菌食性線虫の実験では, 土壌温度や有機物のC/N比によらず, 線虫を入れた試験区の方が入れない区より無機態窒素の生成量が増えた. 糸状菌食性線虫の実験では, 有機物のC/N比の増加に伴い, 線虫を入れない試験区では無機態窒素の生成量が減少したが, 線虫を入れた区では減少しなかった. また, 糸状菌食性線虫を入れた試験区では, 線虫の増殖適温の下で窒素の生成量が最大になった.
著者
岡田 浩明 長谷川 浩 橋本 知義 関口 博之 浦嶋 泰文
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.63-71, 2009
被引用文献数
3

有機栽培と慣行栽培との現実的な違いが土壌の生物性や理化学性に及ぼす影響を検討するためには、有機物施用のみの有機農家圃場(有機)と、化学肥料と化学農薬の使用に加え有機物施用も行う慣行農家圃場(慣行)との比較が不可欠である。2005年と2006年に東北地方のトマト農家温室で線虫群集構造を分析した。土壌の粒径組成、調査地点及び栽培季節の違いを考慮しても、栽培管理(有機と慣行との違い)は両年とも"捕食者+雑食者"群の密度およびStructure Indexに有意に影響を及ぼし、有機で値が高かった。2005年の栽培管理は線虫群集構造全体をも有意に説明し、分類群ごとでは、Dorylaimidaが有機の、DiplogasteridaeとAnguinidaeが慣行の指標となった。一方、2006年には群集全体への栽培管理の影響は有意ではなかった。しかしこの年も分類群ごとに見ると、DorylaimidaとDiplogasteridaeが各栽培管理様式の良い指標となった。個々の環境要因を説明変数として検討すると、土壌の粒径組成や細菌密度がこれらの線虫の密度に有意な影響を与えていたが、その解釈は十分にはできなかった。化学農薬の測定なども含めたさらなる調査が必要である。