著者
Yasuharu Mamiya Miyuki Hiratsuka Masao Murata
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.63-70, 2005-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
8
被引用文献数
3 4 8

Wood-decay fungi, Pleurotus ostreatus, Lentinula edodes, Neolentinus lepideus, Trichaptum abietinum and Cryptoporus volvatus, were tested for their ability to affect the pinewood nematode population in wood by inoculation experiments. Logs of 1m long and branches of 30cm long, cut from healthy pine trees, were inoculated with P. ostreatus and the pinewood nematode. After inoculation, increases in nematode population in wood were compared with those in logs and branches which were inoculated with nematodes alone. Population in wood inoculated with the fungus was significantly less than that in wood without fungus inoculation. Throughout inoculation experiments of other wooddecay fungi, it was demonstrated that L. edodes, N lepideus and T abietinum also showed their ability to control nematode population in wood. C. volvatus were not recognized for their ability to control the nematode population in wood. Inoculation of P. ostreatus and L. edodes to branches cut from dead pine trees killed by the pinewood nematode did not cause decrease in nematode population in dead wood. Fungi might be unable to grow in dead wood because of lack of food resources, such as parenchyma cells which had been destroyed by the pinewood nematode. Jpn. J. Nematol. 35 (2), 63-70 (2005).
著者
真宮 靖冶 平塚 美幸 村田 政穂
出版者
Japanese Nematological Society
雑誌
Japanese journal of nematology (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.21-30, 2005-06
被引用文献数
1

木材腐朽菌を中心とする担子菌14種25菌株についてマツノザイセンチュウ(以下線虫)に対する捕食効果を追及した。ペトリ皿内の1.5%寒天平板上に生育する供試菌菌叢に対し線虫を接種して、菌糸の影響を顕微鏡下で直接観察した。9種の木材腐朽菌に線虫捕食効果を確認した。ヒラタケ、ウスヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ツキヨタケでとくに効果は顕著であった。マツオウジ、シハイタケ、ナメコ、ヒトクチタケにも線虫捕食効果が認められたが、捕食死亡率や効果発現の時間的経過などにおいて、ヒラタケをはじめ上記5種と比べて捕食効果は劣った。ペトリ皿のPDA培地平板上で発育伸長した各菌菌叢が線虫の増殖に及ぼす影響を検討した。ヒラタケ、ウスヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ツキヨタケ、マツオウジ、ナメコの菌叢では、接種線虫は早くに消滅し、以後の増殖は起こらなかった。シハイタケ、ヒトクチタケでは、線虫の生存が接種後もしばらく認められたが、とくに目立った増殖にはいたらなかった。このような増殖実験の結果は、各供試菌が示した線虫捕食効果の強弱と一致していて、菌叢の線虫への直接的な影響を裏付けた。マツオウジ、シハイタケ、ヒトクチタケは、マツ枯死木における普遍的な先駆的木材腐朽菌であり、これらの枯死木材中における生息が、線虫の個体数変動に与える影響が予測された。
著者
吉野 智生 飯間 裕子 松本 文雄 浅川 満彦
出版者
The Japanese Nematological Society
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.7-11, 2019-09-20 (Released:2020-02-11)
参考文献数
21

2013年8月6日に死亡したタンチョウのヒナを剖検したところ、鼻腔内と前胸および叉骨間気嚢から20 個体の線虫が検出された。形態学的に検討した結果、円虫上科開嘴虫科のCyathostoma属Hovorkonema亜属の一種であった。種名決定は保留されたが、タンチョウを宿主としたCyathostoma属線虫の報告は初であり、同時に、この属線虫の国内初となった。本属線虫はミミズを待機宿主として利用することが知られ、この個体は親からミミズを盛んに給餌されていたため、幼虫を含んだミミズを採食して感染したと考えられた。
著者
荒城 雅昭 Ahmad W.
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.31-44, 2002-12

これまでに収集した本邦産Oriverutus属線虫標本について精査したところ、2新種および1本邦未記録種が含まれていることが判明したので、これらの記載、図示を行った。新種Oriverutus arcuicaudatusは、体長0.61~0.65㎜で、唇乳頭が突出して口唇部が顕著に区別されること、歯針は細く長さが15~16μmあること、雌性生殖腺は両卵巣型で、陰門環(pars refringens vaginae)は骨化しないこと、直腸嚢(Post-rectal sac)は小さいこと、尾部が腹側に曲ること、雄では、前腹部補助器(ventromedian supplement)が1個であることなどで特徴付けられる。新種O. parvusは、体長0.65~0.71mmで、唇乳頭が発達して口唇部が見分けられること、歯針は細く長さが13~14μmあること、雌性生殖腺は両卵巣型で、陰門環(pars refringens vaginae)が骨化すること、直腸嚢(Post-recta1 sac)は小さいこと、尾部が円錐形でわずかながら背側に反ることなどで特徴付けられる。雌性生殖腺が後卵巣型のO. occidentalis Pena Santiago & Peralta、1995もわが国で初めて見出されたので記載を行った。
著者
山田 英一 佐久間 太 山下 茂 高橋 穣
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-36, 2007-06-30 (Released:2010-07-21)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

北海道後志支庁管内のジャガイモシストセンチュウ発生圃場において、トマト野生種、ハリナスビ、イヌホウズキの播種時期、播種量と線虫密度低減効果を調べた。トマト野生種の孵化促進効果はイヌホウズキ、ハリナスビよりも高く、密度低減効果もトマト野生種が勝った。トマト野生種の播種時期と密度低減効果を比較すると、春まき栽培(6月上・中旬播種)の気象条件が夏まき栽培(8月11日播種)よりも植物の生育および線虫の孵化に好適なため、密度低減効果は高く、対照の抵抗性ジャガイモ「花標津」と同等か、やや勝る効果が得られた。夏播き栽培の効果はやや劣るが、栽培体系を乱さない点で実用性が認められる。ともに播種量1kg/10 aで効果が高かった。
著者
酒井 啓充 串田 篤彦 奈良部 孝
出版者
The Japanese Nematological Society
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.19-27, 2019-12-20 (Released:2020-06-16)
参考文献数
47
被引用文献数
1 4

ジャガイモシストセンチュウおよびジャガイモシロシストセンチュウの同定診断において、マルチプレックスPCR検定は重要な診断技術の一つである。従来法では、検定結果が陰性の場合にPCRの失敗か非標的種か不明であった。一方、PCR診断における重大な問題としてキャリーオーバー汚染が挙げられる。本研究では、dUTP/UNG系によるキャリーオーバー防止を取り入れた2ステップのマルチプレックスPCR 診断法を考案し、PCR診断技術の信頼性向上と迅速化を図った。併せて、DNA抽出法を簡素化した。本PCR法の結果、ジャガイモシストセンチュウで150 bp、ジャガイモシロシストセンチュウで287 bp、非標的種でおよそ450 bpの産物を生じ、非特異反応は見られなかった。幼虫またはシストの2種混合サンプルを用いた場合、10:1の比率でも両種を検出した。本手法のPCR反応時間は約1 時間で、従来法よりも迅速である。
著者
小倉 信夫
出版者
Japanese Nematological Society
雑誌
Japanese journal of nematology (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.99-102, 2004-12

培養条件下でのマツノザイセンチュウ(センチュウと略す)の増殖に対する殺虫剤(アセフェート(オルトランR)、クロルピリホスメチル(レルダンR)、フェニトロチオン(スミチオンR)、マラチオン(マラソンR)、ピリミホスメチル(アクテリックR)、ピリダフェンチオン(オフナックR))、殺ダニ剤(デコフォル(ケルセンR))の抑制効果を調べた。クロルピリホスメチル、フェニトロチオン、ピリミホスメチル、ピリダフェンチオンは培養条件下でセンチュウの増殖を抑制した。これらの殺虫剤のセンチュウ増殖を抑制する濃度は、それぞれ0.09、0.45、0.62および<0.25ppm以上と推算された。マツ樹幹注入剤メスルフェンホス(ネマノーンR)と酒石酸モランテルナトリウム塩はそれぞれ1.28および3.58ppm以上の濃度で同様の効果を示すと推算された。クロルピリホスメチル、フェニトロチオンおよびピリダフェンチオンはマツノザイセンチュウの媒介昆虫であるマツノマダラカミキリに対する予防散布薬の成分でもある。このような一致は興味深い。
著者
植原 健人 百田 洋二
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.27-30, 2018
被引用文献数
3

<p>タバコシストセンチュウはトマトやナスに寄生し増殖する。タバコシストセンチュウが高密度に増殖した圃場においては、寄主である植物の成長が抑制されることが知られている。線虫の防除法としては、抵抗性品種を利用することが最も効果的で環境への影響の少ない方法である。しかしながら、トマトに対するタバコシストセンチュウの寄生性や増殖性の違いを調査した研究報告は非常に少なく、タバコシストセンチュウに対するトマトの抵抗性は、ほとんど研究されていない。そこで本研究では、タバコシストセンチュウの抵抗性トマト品種を探索するため、複数のトマト品種へタバコシストセンチュウを接種し、その増殖性を調査した。結果としては、タバコシストセンチュウ抵抗性トマト品種が見つかり、具体的には「ドクターK」「シュガーランプ」「キャロル10」「キャロルクィーン」および「チェルシーミニ」の5 品種がタバコシストセンチュウ抵抗性を持つことが確認された。</p>
著者
吉賀 豊司
出版者
The Japanese Nematological Society
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.71-73, 2018-12-20 (Released:2019-09-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2

Caenorhabditis japonica はベニツチカメムシと種特異的で雌に偏った便乗関係をもつ。C. japonica の分布を明らかにするため、日本の九州から沖縄にかけてベニツチカメムシから線虫の調査を行った。C. japonica は九州、奄美大島、徳之島の6個体群全てで検出されたが、沖縄では検出されなかった。C. japonica の分布がこれらの島に制限されていることは、C. japonica やベニツチカメムシとの便乗関係の起源がこれらの島であることが示唆される。
著者
片瀬 雅彦 柴田 忠裕 Gaspard Jerome T. 水久保 隆之
出版者
日本線虫学会
雑誌
Nematological research (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.45-47, 2009-06

千葉県の植木産地では、伝統的な樹芸技術によって多数の造形樹が生産されている。近年、EU諸国における日本庭園ブームや中国における造形樹の需要拡大により、植木の輸出量は拡大傾向にある。ところが、出国時の植物検疫において植木の土壌から規制の対象となる植物寄生性線虫が検出されると、その植木を輸出することができない。さらに、輸出相手国の植物検疫において規制の対象となる植物寄生性線虫が検出されると検疫措置を課せられ、植木の廃棄または返送処分を被る場合もあることから、輸出上の大きな障害になっている。日本の樹木類に寄生する土壌線虫に関して、これまで林業苗畑、森林樹木、花木類を対象とした調査報告があり、庭木樹種ではイヌマキ、イヌツゲにおいて線虫検出記録があるものの、造形樹となる植木を対象とした組織的な調査は行われていない。そこで、植木に寄生する土壌線虫の種類を明らかにするために、千葉県下の植木生産圃場において線虫調査を行った。
著者
岡田 浩明 長谷川 浩 橋本 知義 関口 博之 浦嶋 泰文
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.63-71, 2009
被引用文献数
3

有機栽培と慣行栽培との現実的な違いが土壌の生物性や理化学性に及ぼす影響を検討するためには、有機物施用のみの有機農家圃場(有機)と、化学肥料と化学農薬の使用に加え有機物施用も行う慣行農家圃場(慣行)との比較が不可欠である。2005年と2006年に東北地方のトマト農家温室で線虫群集構造を分析した。土壌の粒径組成、調査地点及び栽培季節の違いを考慮しても、栽培管理(有機と慣行との違い)は両年とも"捕食者+雑食者"群の密度およびStructure Indexに有意に影響を及ぼし、有機で値が高かった。2005年の栽培管理は線虫群集構造全体をも有意に説明し、分類群ごとでは、Dorylaimidaが有機の、DiplogasteridaeとAnguinidaeが慣行の指標となった。一方、2006年には群集全体への栽培管理の影響は有意ではなかった。しかしこの年も分類群ごとに見ると、DorylaimidaとDiplogasteridaeが各栽培管理様式の良い指標となった。個々の環境要因を説明変数として検討すると、土壌の粒径組成や細菌密度がこれらの線虫の密度に有意な影響を与えていたが、その解釈は十分にはできなかった。化学農薬の測定なども含めたさらなる調査が必要である。
著者
荒城 雅昭 Ahmad W.
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.23-40, 2003-06

本邦各地で採集した土壌試料から、Qudsianemaidae科に属する未記載の線虫4種および2種の本邦未記録種が検出されたので記載を行った。新種Eudorylaimus inermediusは、体長が0.76-0.84mm、口唇部が胴部からはっきりと区別され、双器が大きく、歯針長10-11μm、陰門は体の中央からやや後より体を横断するように開口し、陰門環(pars refringens vaginae)は強く骨化すること、尾部が腹側に曲ること、雄では、前腹部補助器(venromedian supplemen)が3-4個である。新種E. niaesiは、体長が1.85-2.36mmで細長い体を持ち、口唇部が胴部からわずかに区別され、双器は小さくあぶみ型、歯針は長さ19-20μmで、食道腺背側の核が著しく大きく、陰門の開口は横断型で、膣は球形、陰門環はよく骨化すること、前後の生殖巣の発達がともに悪く小型であること、尾部が円錐状で腹側に曲ることが特徴である。新種E.kyooensisは、体長が1.90-1.96mmと細長い線虫で、唇乳頭が突出して口唇部が胴部から顕著に区別され、双器は大型、歯針は長さ22.5-23.5μm、陰門は横断型で開口し、陰門環は小型で、前後の生殖巣は発達がよく、円錐状の尾部は腹側にカーブする。新種Paraxonchium japonicumは、体長が0.66-0.80mmの線虫としてはずんぐりした体形で、口唇部は丸く顕著で、双器は大きく、非対称な歯針は長さ20-21μmで、先端の開口は短い。食道腸間弁には大きな3つの腺細胞が付着し、陰門は体の中央から後よりに体を横断するように開口、陰門環は強く骨化し、卵巣は両卵巣型、尾部は短く円錐状、ほとんど曲らない。Ecumenicus monohysera とMylodiscus nanusもわが国で初めて見出されたので計測値を報告した。
著者
Ahmad Wasim 荒城 雅昭
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.31-44, 2002
被引用文献数
1

これまでに収集した本邦産<I>Oriverutus</I>属線虫標本について精査したところ、2新種および1本邦未記録種が含まれていることが判明したので、これらの記載、図示を行った。新種<I>Oriverutus arcuicaudatus</I>は、体長0.61~0.65mmで、唇乳頭が突出して口唇部が顕著に区別されること、歯針は細く長さが15~16μmあること、雌性生殖腺は両卵巣型で、陰門環 (<I>pars refringens vaginae</I>) は骨化しないこと、直腸嚢 (post-rectal sac) は小さいこと、尾部が腹側に曲ること、雄では、前腹部補助器 (ventromedian supplement) が1個であることなどで特徴付けられる。新種<I>O. parvus</I>は、体長0.65~0.71mmで、唇乳頭が発達して口唇部が見分けられること、歯針は細く長さが13~14μmあること、雌性生殖腺は両卵巣型で、陰門環 (<I>pars refringens vaginae</I>) が骨化すること、直腸嚢 (post-rectal sac) は小さいこと、尾部が円錐形でわずかながら背側に反ることなどで特徴付けられる。雌性生殖腺が後卵巣型の<I>O. occidentalis</I> Peña Santiago & Peralta, 1995もわが国で初めて見出されたので記載を行った。
著者
EL-SHERIF M. A. ALI A. H. BARAKAT M. I.
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.55-59, 1994
被引用文献数
4

<I>Meloidogyne incognita</I>の卵塊および<I>Heterodera zeae</I>のシストからいくつかの細菌を分離した。殺線虫効果という点でそれらの細菌をスクリーニングした結果、5種が植物寄生性線虫に対して拮抗作用をもっていた。その分離株は、<I>Bacillus</I> sp.、<I>Corynebacterium</I> sp.、<I>Serratia</I> sp.、<I>Arthorobacterium</I> sp.、<I>Streptomyces</I> sp.であった。これらは、卵塊やシストに付随していることが多かった。その5つの分離株の培養液は、0.1%という低濃度でも<I>M.incognita</I>の卵の孵化を阻害した。0.6%濃度の培養ろ液は、<I>M.incognita、Rotylenchulus reniformis</I>ならびに<I>Tylenchulus semipenetrans</I>に高い毒性をもっていた。しかし、もっと低い濃度では、この毒性効果は線虫の種類によって異なった。
著者
相原 孝雄
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1-2, pp.1-11, 2001-12-28 (Released:2011-08-11)
参考文献数
13
被引用文献数
1 5

1992及び1993年の晩秋に鳥取県下の数地域で採集されたヒダに瘤のあるヒラタケから本邦未記録属線虫の1種の菌食態雌成虫、雄成虫及び感染態雌成虫を検出した。それらを既記載の7種と比較し、新種Iotonchium ungulatum (ヒラタケヒダコブセンチュウ) と命名し、ここに記載した。本種の雄成虫の交接刺はL字形で、その先端部分が動物の脚に似た独特な形状をしていることから (種小名は、この特徴に由来する)、I. bifurcatum、I. califomicum、I. cephalostricum、I. fungorum、I. imperfectum及びI. macrospiculatumと明確に識別される。また、雄成虫が発見されていないI. mycophilumとは、本種の感染態雌成虫の体長が短く、尾の先端が尖っていることによって識別される。
著者
真宮 靖治
出版者
日本線虫学会
雑誌
日本線虫学会誌 (ISSN:09196765)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-9, 2006-06-30 (Released:2007-11-22)
参考文献数
7
被引用文献数
5 7

数種木材腐朽菌の菌糸に対するマツノザイセンチュウ (以下線虫) の集合現象を検証する目的で、寒天平板上における線虫の行動を追跡した。これまでに、線虫に対する強い捕食効果を明らかにしてきたヒラタケ、ウスヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ツキヨタケの菌糸では、線虫の顕著な集合現象が確認された。捕食効果が小さいか、あるいはほとんどないマツオウジ、シハイタケ、ヒトクチタケ、ナメコの各菌では、菌糸への線虫の集合は認められなかった。捕食効果がやや強いマツオウジでは、その他の各菌とは異なる菌糸に対する線虫の反応が観察された。Botrytis cinerea の菌糸に対して、捕食効果の強い各菌の場合ほど顕著ではなかったが、線虫の集合現象が認められた。これは食餌となる糸状菌に対する菌食性線虫の反応としてこれまで明らかにされたこととの一致と考えられた。本研究の結果から、線虫に対して強い捕食効果をもつ各種木材腐朽菌の菌糸には線虫誘引効果のあることが示された。