著者
橋永 文男 長谷川 信
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.227-229, 1989
被引用文献数
12

スダチ種子中のリモノイド組成とその含量をUV検出器を備えた高速液体クロマトグラフを用いて分析した.<br>主要なスダチ種子のリモノイドはリモニンで新鮮種子1g当たり2.53mg (全リモノイドの50.3%) であり,つづいてイチャンゲンシン, デアセチルノミリン, ノミリンが多く, さらに少量のイチャンギン, オバクノンが含まれていた. また酸性リモノイドとしてはノミリン酸,デアセチルノミリン酸, イソリモニン酸が認められた.<br>イチャンゲンシンはイーチャンチーのみに特異的に存在するリモノイドであり, スダチ種子がこれを含有していたことはスダチがイーチャンチーを祖先にもつ雑種であるか, あるいは極めてこれに近い品種であることを裏付けるものである. またイチャンゲンシン等のリモノイドはカンキツの分類学に化学的指標の一つとして利用可能であることを示した.
著者
橋永 文男 伊藤 三郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.485-492, 1983
被引用文献数
1 4

ハッサクとブンタン果実を1か月おきに採収し, 部位別にリモノイド含量を測定した.<br>1. ハッサクの果肉のリモノイドはリモニンが主成分であり, 9月に50ppmを示した. 果肉とじょうのう膜のノミリンは8月に最も濃度が高く (20ppm く 500ppm), 以後急減した. 種子ではノミリンが10月に, またリモニンが11月に最高値を示した.<br>2. ブンタンはフラベド以外のすべての部位でノミリンが他のリモノイドに比べて多く, とくにアルベドとじょうのう膜では顕著であった. じょうのう膜のリモニンはデオキシリモニンと同じ含量を示しながら変動した. 種子では種核のリモノイドの方が種皮より顕著に高く, 12月に最高値を示した.<br>3. ブンタンの個体当たりのリモノイド含量は最高200mgに達した. 種子のリモノイド濃度は高いにもかかわらず, 種子重が少ないため, その含量はアルベドやじょうのう膜より少なかった. 両果実とも各部位でノミリンのピークのあと1か月でリモニンのピークが現れることが明らかになった.
著者
橋永 文男 古賀 俊光 石田 和英 伊藤 三郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.29-37, 1984-03-15
被引用文献数
2

プリンスメロンの成熟に伴う果実(未熟, 適熟, 過熟)の化学成分の変化および生理障害果の一種である異常発酵果(浸出果, 緑斑果)の化学成分を比較した.1.生理障害発生の著しい圃場のプリンスメロン果実は成熟に伴い, 全窒素, アルコール可溶性窒素, 遊離アミノ酸, タンパク質等の著しい増加が認められたが, 対照区の生理障害果の発生の少ない地区の果実では成熟に伴う変化が顕著でなく未熟果と大差がなかった.遊離アミノ酸はグルタミンが最も多く, つづいてアラニン, シトルリンであった.浸出果はアスパラギン酸が多く, アルギニンが少なかったが, 緑斑果は逆であった.2.果実硬度は成熟につれて減少したが, 緑斑果は未熟果と同じであった.糖は浸出果で多く, 緑斑果で少なかった.クエン酸は異常発酵果で少なかったが, 浸出果は酢酸が多かった.また浸出果はカルシウムが少なく, カリウムが多い傾向にあった.3.香気成分は果心部の方が果肉部より多く含み, 酢酸エチル, エタノール, 酢酸オクチル, オクタン酸プロピルが主要な成分であった.異常発酵果はエタノールとイソ吉草酸メチルが増加したが, 大部分の成分は減少した.タンパク質バンドおよびパーオキシダーゼ活性は果実の成熟につれて増加した.緑斑果のパーオキシダーゼアイソザイムは特異な活性バンドが認められた.4.異常発酵果は正常果に比べて全窒素や遊離アミノ酸, エタノール, イソ吉草酸メチルの含量が多かった.そのうち浸出果は硬度, 糖度, タンパク質バンド, パーオキシダーゼアイソザイムなどから過熟果に類似し, 緑斑果は未熟果と類似していた.