著者
古屋 正貴 剱持 苗子 檀上 圭司 ウンア ジョン
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 平成22年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.8, 2010 (Released:2011-03-03)

北海道の鉱山から産出したロードクロサイトは、日本から産出する数少ない宝石の一つである。北海道古平郡古平町稲倉石鉱山はマンガンの採掘を目的に昭和59年まで稼働していた。ロードクロサイトはそのマンガン鉱石の副産物として産出していたものであった。しかし、海外からのマンガンの鉱石の輸入に押され、鉱山は閉山してしまい、ロードクロサイトの産出もなくなってしまった。現在、マンガン鉱山が稼働していた頃に産出されたものが流通している状況である。 一般にロードクロサイトには、ファセットカットにもされる透明石と、カボションカットにされる半透明石がある。前者では世界最大の結晶を産出するアメリカのコロラド産が有名であり、後者ではインカ・ローズの別名に用いられているようにアルゼンチン産が有名である。これらを含め、中国、ペルー、ロシア、ブラジル、南アフリカ産のものと北海道産のロードクロサイトを比較した。 MnCO3を成分とするロードクロサイトは、透明度の高いものであると蛍光X線成分分析機ではMnOしか検出されないものもあるが、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの不純物が検出されるものもある。また、北海道のものを始め、半透明のものでは不純物も多く検出される。それら不純物の含有量や割合を元に産地ごとの特性を調べてみた結果、北海道産について他の産地より、マンガン量が少ない、鉄分が多い、亜鉛は少なく、マグネシウムは少なく、カルシウムは多いなどの特徴が見られた。 また、紫外・可視分光スペクトルや、FT-IRなどのスペクトルにも特徴が見られたので、それについても合わせて報告したい。